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業界最大、“ポリフェノール”も増える冷蔵庫

» 2005年05月14日 03時08分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 三菱電機は、本社ビル1階のイベントスペース「DCROSS」で“大きな家電”のイベントを催している。しかし、展示品はわずかに2種類。本邦初公開の大容量冷蔵庫「Wclass」(ダブルクラス)と、2月に発売したリアプロTV「62-DL5」だ。

 このイベント、タイトルを「大型・クオリティ家電 展示会」という。先日リリースしたWclassのお披露目を兼ね、大型の高付加価値商品を訴求するのが狙い。普段は喫茶店スタイルのDCROSSはリビングダイニング風に改装され、いくつかの生活スタイルを提案する形で製品を展示している。5月14日(土曜日)から一般公開する予定だ。

photo WClassは、ステンレスとダークブルーの2色。ダークブルーを選んだのは、「重厚かつ高級」というイメージから
photo 国内メーカーで唯一DLP方式を採用したリアプロTV「62-DL5」

ポリフェノールも増える冷蔵庫

 「WClass」は、545リットルという容量を誇る大型冷蔵庫だ。日本の家庭で使われている一般的な冷蔵庫が400リットル程度のため、実に1.4倍近いサイズ。国内でここまで大型の家庭用冷蔵庫を市販するのは業界初だ。展示機の大きな扉を開くと、ローストチキンが丸ごと入っていたりして、思わず昔の米国製アニメを思い出さずにはいられない。

photo ローストチキンとケーキは必須アイテム。あと、穴の開いたチーズが丸ごと入っていたら完璧
photo 高価そうなダイニングセットがよく似合う。冷蔵庫のサイズは、800(幅)×1809(高さ)×694(奥行き)ミリ、107キロ。設置時には壁際に5ミリ以上の隙間を設ける必要がある

 デザインも凝っている。ドアは中央から左右に開く観音開きタイプ。上段は左右とも冷蔵庫、中央の段にアイスルームと「切り換え室」(冷凍、冷蔵、野菜に変更可)、下段は冷凍庫と野菜室になっている。これはユニバーサルデザインの考え方を取り入れたもので、たとえば切り換え室を野菜室に設定しておくと、「冷蔵庫の前に立ったとき、膝から肩の高さにあたる“ゴールデンゾーン”にすべての温度帯がくる構造になっている」(同社)。

 また大きな扉には、すべて「オートクローザー」と呼ばれる機構が付いている。内側にダンパーとバネが入っていて、扉が少し開いている状態(20度以内)で手を離すと自動的に閉まる仕組みだ。これがあれば、ドアが少し開いているのに気づかず、奥さんに「電気代がもったいない」と叱られることもなくなる。

ポリフェノールが増える野菜室

 もちろん単に大きいだけではなく、「WClass」には、いろいろな付加機能も付いている。たとえば、水道水のカルキを抜いて美味しい氷を作る「うまさ透明 鉛クリーン光清氷」、ー40度の冷気で急速冷凍する「新・切れちゃう冷凍」など、同社のTV CMでお馴染みの機能はすべて盛り込んだ、まさに“全部入り”仕様だ。

 そして三菱の冷蔵庫といえば、野菜室にあるLEDの光で野菜のビタミンCやクロロフィルを増やす「光パワー野菜室」。しかも今回は、“ポリフェノール”まで増えるようになったという。

 「野菜は、紫外線を受けると自己防衛に基づいた光反応を起こし、ポリフェノールの生成作用を活性化させる性質がある。実験により、375ナノメートルの波長を持つ光(紫外線)を弱くあてると、野菜の中でポリフェノールが増えることがわかった」(同社)。

photo 590ナノメートルの光で光合成を進め、375ナノメートルの光でポリフェノールを増やす

 野菜室の奥を覗き込むと、光合成を進める黄色いLEDの横に、紫色に小さな光が見えた。これが弱い紫外線を出し、野菜の防衛本能を刺激するLEDだ。同社の検証では、一束のクレソンを野菜室に3日間入れておいたところ、ポリフェノールの一種が1割ほど増えたという。対して通常の野菜室では、ポリフェノールが1割減少しており、明らかな差が生じた。

photo 3つの黄色い光はビタミンCを増やすLED。少し見難いが、上段の左側にポリフェノール増量用の小さいLEDがある。対象はあくまで野菜のため、ワインやチョコレートを入れてもポリフェノールは増えない。念のため
photo 製品が大きければ、広告も大きめ。三菱電機は「Wclass」の発売に合わせ、駅の階段に巨大な広告を掲示――ではなく“貼り付ける”。池袋の西武池袋線JR連絡階段、新宿駅の小田急線JR西口改札前の大階段などに注目だ

高いか、安いか?

 Wclassの価格は「30万円を切る程度」(同社)と、一般家庭用冷蔵庫としてはかなり高価だ。サイズが大きいだけに設置できる家庭も限られてしまい、マス向けの商品としては不利だろう。他メーカーが競合する製品を出していないという事実も、それを裏付けている。

 しかし、三菱電機はある程度の手応えを感じている様子だ。「(前モデルの)G50のユーザーを対象に行ったアンケート調査によると、冷蔵庫の“理想的な容量”は“480-520リットル”が一位だった。しかし“それ以上(521リットル以上)”という回答も3割あった」。

 万人に受け入れられるものではないが、市場はあると判断。価格よりも“余裕”や“質”を追求する「アクティブなリッチ層」を取り込みたい考えだ。62型のリアプロTV「62-DL5」と一緒に展示イベントを行ったのも、そうした思惑による。

 「たとえば、同じ食事なら多少値段が高くても雰囲気の良いお店に行く人、(家電により)省力化された生活にお金をかけてもいいという人、高価でも環境に優しい製品を買いたいという人――そんなユーザー層に本物の価値を提供したい」(三菱電機の田代正登家電事業部長)。

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