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コラム
» 2005年05月19日 14時38分 公開

ペイテレビの解約防止をどう考えるか (1/2)

日本の常識では「テレビはタダ」だと言われてきた。だが、今や有料放送(ペイテレビ)も立派に市民権を得ている。当然今後も加入者の拡大が図られるだろうが、むしろ最近の課題となっているのは加入者の解約防止策の方だ。そこで鍵となるのが加入者のセグメント化である。

[西正,ITmedia]

大きく2つに分かれる加入者像

 わが国初の有料衛星放送であるWOWOWも15年目のシーズンを迎えた。その間に登場したスカパー!も着実に加入者数を増加。WOWOWが1チャンネルで250万件、スカパー!はプラットフォーム全体で350万件の加入者を抱えるに至っている。

 このうちWOWOWが苦しんでいるのは、アナログ加入者を数多く抱えているからである。言わばサイマル放送の大変さを最初に経験しているのであり、これは地上波にとっても決して他人事ではないだろう。一方、デジタルから始めたスカパー!はサイマルの苦労とは無縁だが、こと加入者の解約防止策については、両者にとって共通の課題となっている。

 ペイテレビには加入・解約の手続きが必要だ。ところがデジタル化で加入・解約の手続きが電話一本でできるようになったため、加入・解約を繰り返す視聴者が増えている。経営的見地からすると、これは不安定要素と見える部分だ。ただ、加入・解約が容易なことがデジタルの特質でもあるため、有料放送事業者は加入が容易である点ばかりを言い募ってきた感がある。

 さて、ここでペイテレビの解約防止について考える場合、あくまでも傾向値ではあるが、加入者には2通りのタイプがあることと、ペイテレビが取り扱うジャンルによっても層が違うことを認識しておかなければならないだろう。加えて、新規加入者の拡大策をどのように考えて行っているかも、併せて再確認することが必要だ。加入・解約に要する労力が減ったことを、新規加入者の拡大促進に使うのも良いが、それが解約の増加にもつながっていることを認識していないようでは、デジタル化の都合の良い点しか見ていないと言わざる得ないからだ。

 まず、第一に加入者を2通りに分けて考えるという点だが、これは加入・解約を繰り返す層と安定的な層があるということである。

 解約が容易なペイテレビであっても、一度契約したら、見ている、見ていないによらず、毎月の視聴料を払い続ける人は実は多い。これは視聴料の高低の問題というよりも、加入・解約を繰り返すことを面倒と考えるかどうかの問題だと筆者は見ている。確かにデジタル化によって、加入・解約の手続きは簡素化されたが、それでもなおそうした手続きを面倒と考え、何よりも見たい時に見られるようにしておきたいという人々である。これは中高年層以降に多く見られる傾向だ。

 一方、デジタル化を機に、加入・解約をまめに行う人が増えていることは紛れもない事実だ。これは、そのチャンネルのファンというよりも、たまたま、見たいコンテンツがそのチャンネルで放送されているからという理由で加入する人たちである。

 こうした視聴者層は本来的にはペイ・パー・ビューに向いている層であり、ペイテレビ側も新規加入者拡大増強キャンペーンを行うにあたって、そうした視聴者を主たるターゲットにしてきたことは否めない。

 であれば、そのコンテンツの放送が終了した途端、解約されてしまうことはペイテレビ側も覚悟の上のはずだ。ところが、なぜかペイテレビについては毎月の加入・解約者数の状況が経営問題とリンクされて報じられるため、その数字だけが必要以上のインパクトで採り上げられる傾向にある。その上、あろうことか、経営サイドまでが、そうした報道に一喜一憂しているのである。これには首を傾げざるを得ない。

 実際のところ、今のペイテレビの加入者層の大半は、加入したら簡単には解約しない安定層なのである。いくら簡素化されたとは言え、加入・解約の手続きを面倒に感じる人は多い。ペイテレビ全体の加入者がまだ多いとは言えない現状でペイテレビに加入している人たちの多くは、そうした層であることをよく認識するべきだ。初期段階の加入層は好奇心が強い層なのも事実だが、資金的に余裕のある層であることも確かである。毎月報じられる加入者の増減数が、ペイテレビ事業者の経営を大きく左右するほどの変化でないことは、冷静に見ていれば簡単に分かるはずだ。

 わが国における平均テレビ視聴時間のデータにはほとんど変化がない。ペイテレビの加入者数が少しずつ伸びてきても視聴時間が大きく増えることがないということは、加入した以上は見続けていなければもったいないと考える人がそう多くはないことを示している。“ペイ・パー・ビュー的”でないともったいないと考える人がいる一方で、見たい時に見られるようにと、とりあえず毎月の視聴料を不満なく払っている人も非常に多いのである。

 解約防止策を講ずるのは重要なことだが、草創期のペイテレビの加入者の多くは、そのチャンネルの加入者数のベースとして、不動の存在であり続けてくれていることを忘れてはいけない。加入・解約が容易になったことを一番実感しているのは事業者側であろう。だが、その結果、ベースとなってくれている加入者のことを忘れて、新規加入者の拡大や解約防止策を講ずることばかりに気を奪われ、ベーシックな加入者に愛想を尽かされてしまったのでは、本末転倒もいいところである。

 資金的にも余裕がある中高年層が、ベースとなる加入者であり、彼らは高価なデジタルテレビへの買い替えも比較的容易な層でもある。その層をしっかりと確保しておくことこそ肝要であり、そうした層の厚みが着実に増してくるような番組編成を行っていくべきだ。

ジャンルの違いと新規加入者拡大促進の考え方

 ペイテレビのコンテンツにも色々なジャンルがある。加入・解約を繰り返す層とベーシックな顧客層のバランスは、ジャンルによって大きく異なる傾向がある。

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