テレビの進化は画質だけではない。多チャンネル化と多機能化により複雑化した操作を簡単にする研究も進められている。
「たまちゃん」は、音声認識を利用した自然な対話により、ユーザーに代わってテレビを操作する“テレビ視聴エージェント”だ。「NHK総合にして」などと声で指示するだけで、チャンネル変更やホームサーバに蓄積した番組の再生などを実行してくれる。
新たに搭載した「Q&A機能」は、たまちゃんがデータ放送やインターネットの情報を駆使してユーザーの疑問に答えてくれるというもの。しかもジャンルは問わない。番組を見ていて何か疑問を感じたら、たまちゃんに「ちょっと教えて」と声をかけるだけだ。
「調べてあげるから、何でも聞いてね」(たまちゃん)。
デモンストレーションでは、説明員が「アレルギーを起こす物質は何?」という難しい質問を投げかけていた。すると、しばらくしてテレビ画面の右半分に検索結果が出た。ただし通常のインターネット検索ならWebサイトのタイトルが表示されるところに単語の形で“回答”が並ぶ。「検索結果の文章を解析し、質問内容の評価関数を当てはめて、回答になる単語を抜き出している」という。
説明員によると、今のところ文章の意味解析が不十分なため、単語の形で答えられる質問(WHO・WHAT型質問)に限られるが、将来的には「なぜ〜」「どのように〜」といった文章で答えなければならない質問(WHY・HOW型質問)にも対応する計画だ。
夢の立体テレビを実現する「電子ホログラフィ」の技術展示もあった。ホログラフィといえば、光の干渉を利用して立体像を再生する技術。「干渉縞」と呼ばれる微細な模様を使い、“理想的な立体像”を造り出すといわれている。
NHK技研が開発したのは、世界初の「両眼で立体視が可能な電子ホログラフィ」。動画再生が前提となるテレビ用途の場合、干渉縞は液晶パネルに映すが(だから電子ホログラフィ)、パネルから出た光がいくつものレンズやハーフミラーを経て空間に結像させるという、見るからに複雑なシステムだった。
立体像を実際に見ると、小さな「どーもくん」(NHKのマスコットキャラクター)と花が空中に浮いている。ただし、見えるのは真正面からのみ。上下左右の視域が極端に狭く、少し顔を動かすと見えなくなってしまう。見えるといわれた場所を“覗き込む”ようにしなければならなかった。
それでも、電子ホログラフィ研究において、今回の「90センチ離れた場所で、両目の幅」という視域は世界最高レベルだという。理由は「微細な干渉縞を表示するには、液晶パネルの画素ピッチがまだまだ粗い。たとえば10ミクロンのピッチでは、2〜3度の視域しか得られない」ためだ。
また、画素の間隔が広いと、本来の再生像とは凹凸が逆の“共役像”と呼ばれる像が発生し、再生像の邪魔をしてしまう。NHK技研では、この共役光を除去する技術と、像の再生時に発生する回折光という光を利用して視域を広げる技術を開発して視域を広げた。
「将来的に、液晶パネルの画素ピッチが“1桁”小さくなれば、視域は30度以上に広がるだろう」。
立体テレビを作るには、まず液晶パネルの進化を待たなければならないようだ。
NHK放送技術研究所の一般公開は5月29日(日)まで。入場は無料だ。
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