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コラム
» 2005年06月17日 10時31分 公開

西正:IP方式で地上波が再送信されるまでの道のり (1/2)

現在はIP方式で地上波放送の再送信が認められることはない。しかし、いずれIP放送が主流になっていくことは時間の問題だろう。だが、そこにいたるまでの“葛藤”は、既に表面化しつつある。

[西正,ITmedia]

ドラマとバラエティーの違い

 放送と通信、それぞれの文化は大きく異なるとは言え、技術的には融合が進んでいる以上、今の地上波放送もいずれIP方式で再送信が認められることになるだろう。

 この春から、テレビドラマについての暫定料率が適用されることになり、ブロードバンド配信をする事業者は、その情報料収入の8.95%と広告料収入の1.35%を著作権使用料として支払うことになった。

 ただ、その対象は、あくまで“単発のテレビドラマ”に限った話である。それも、これから作られる作品についての話であり、過去の作品は含まれない。過去の作品の権利処理は容易ではないからだ。とはいえ、これから作られるドラマについての道が開けたことで、今後の展開に一見それなりの期待が持てるように思えるだろう。

 だが、IP放送に携わる事業者は、地上波の再送信が認められる日の到来はまだまだ先のことと考えているようだ。まずは単発のテレビドラマから始まった理由を探ってみよう。

 権利者団体にも音事協(日本音楽事業者協会)、芸団協(日本芸能実演家団体協議会)といった、いわゆる著作隣接権を持っているところや、日脚連(日本脚本家連盟)、シナ協(シナリオ作家協会)など色々とあり、その全部の了解を取らなければならないわけだが、ドラマの場合には比較的に取り易い形になっている。

 というのも、ドラマでは、そこに参画している人たちがブランケットで契約しているケースが多いからだ。例えば、音楽にしてもブランケット契約になっているため、売上げの何%を支払うという形になっているし、日脚連やシナ協との間でも再放送価格などのパーセンテージが、既に決まっている。芸団協との話し合いで決められるのは端役の役者さんのケースが多いが、トップクラスの役者さんとの間でも、大体、再放送価格の標準的なテーブルが出来ている。また、ドラマの場合はテレビ局まわりのスタッフの名前も、著作権を確保するために全部表示されることになっている。

 ところが、バラエティーになった途端に、小道具とか持道具といったスタッフは表示されなくなるケースが大半である。また、タレントの権利も重要だが、それよりも音楽の著作隣接権的なものを持っている人たちの権利が重んじられることになる。例えば、バックグラウンドに音楽を使ったとすれば、それを作曲した人、作詞した人、演奏していた人の全部に権利がある。ドラマの場合には、そういうものもブランケット処理されているが、バラエティーになると、その辺りは曖昧になっていることが多い。

 関連する権利者の表示があいまいになっていればいるほど、それをブロードバンドなどで再利用しようとする時の権利処理に手間がかかるのは当然のことである。IP方式で地上波の同時再送信を実現しようとするならば、あらゆるジャンルについて問題の解決を図っていかなければならないが、まずは権利者を明らかにしていくことから、根気強く進めていく必要があるのだ。

ニュースの場合

 ニュースの場合、既に動画も含めてIP方式で流されているが、決して権利処理が容易なわけではない。ニュースについては、肖像権の問題が出てくる。今でもニュース番組を見ていると、いわゆる当事者を映す時に周りの人の顔にボカシを入れている。つまり、個人情報の問題であるとか、新たに色々な問題が出てくる。

 それはテレビ局だから出来ることであって、それこそネットなどで個人が流した場合などは訴えられたら大変なことになってしまう。

 社会的なニュースに関しては、当事者の意思によらず、顔が映されることが多いが、実態としては、犯罪の容疑をかけられた逮捕者であっても、顔はもちろんのこと手錠の部分も隠すことが認められている。人権問題につながりやすいため、なかなか難しい局面が多く、新聞やテレビ局のようなマスメディアでないとクリアすることは難しくなってくる。

 昨今、ジャーナリズムの在り方をめぐって、ネットとマスメディアとの比較論が盛んに行われているが、人権侵害などが起こった場合の責任の所在や処理については、マスメディアの方で確立されていることは明らかだ。IP方式で地上波の再送信を行うことが可能になっても、そういった取扱いについては、既に確立されたルールに従わざるをえないだろう。

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