DVDメディアの価格低下はとどまるところを知らず、DVD-Rならば1枚100円を切る価格がつけられていることも珍しくない。一方で、家庭用レコーダーに搭載されるHDDの容量はどんどん大きくなり、普段はHDDを使った録画で十分というユーザーも多い。
また、より大容量のHD DVDやBlu-ray Discといった次世代DVDも普及に向けた動きを早めており、登場時は“夢の大容量”をうたったDVDも徐々にその足元を揺さぶられているように見える。
いまやコンビニでも買える日常品ともなったDVDメディアは今後どうなるのか、TDKマーケティング代表取締役社長の牧野利彦氏に話を聞いた。
MM総研が6月2日に発表した調査によれば、DVDレコーダーの総出荷台数は前年度比104.1%増の443万台に倍増しており、世帯普及率も15%を突破したという。同調査ではHDDの搭載比率は不明だが、現在の市場でDVDレコーダーといえばHDDを同時に搭載しているものがほとんどであることから、前述の数値はDVD/HDDレコーダーの出荷台数と普及率を示すと思って間違いないだろう。
「HDDのおかげでDVDメディアの需要は伸びている」
HDDを搭載した家庭用レコーダーの普及による影響を、牧野氏はこう分析する。
「1年ほど前は(HDD搭載レコーダーの普及が)DVDメディアへ悪影響を与えるのではと心配していました。しかし、実際のところDVDメディアの需要はむしろ増大する傾向にあります。これは、家庭用レコーダーの普及によって“HDDは一時保存、DVDは永久保存”という色分けが明確になったからだと理解しています」
牧野氏によれば、DVDメディアの市場は6億円規模に成長する可能性を秘めており、これは全盛期のカセットテープの規模を超えるものだという。しかし、「メディアの低価格化は既に限界」と同氏も認めるように、低価格化の促進だけではその成長を達成することは不可能な状況だ。
「これからは家庭用レコーダーの普及に牽引される形になるでしょう」。牧野氏はDVDメディアの成長のためには、家庭用レコーダーのさらなる普及が必要だという。各種の調査も普及率については今後も上昇するとしたものが多く、DVDメディアの市場は拡大する可能性は高い。市場が拡大すればそれだけユーザー層も広がることから、低価格化以外の部分で差別化を図ることも可能になる。
低価格以外の差別化要因として、まずユーザーへアピールしやすいのは高速記録への対応だ。ストレスなくHDDのコンテンツをDVDに保存するには、高速な書き込み速度が必要不可欠だからだ。同社でも高速化への需要を強く感じとっており、DVD-Rについては8倍速メディアが高い比率を占めるという。「(高速メディアが受け入れられているのは)“HDDに録画したものをDVDに保存する”という市場の流れを受けたものだと思います」(牧野氏)
しかし、高速化自体はDVDの規格に定められたものであるから、“高速記録”という面で独自性を出すことは困難。だが、それ以外にも同社は独自の高付加価値要素を保有している。記録面へのハードコート処理「DURABIS」(超硬)だ。
DURABISは2002年末から製品へ投入されたハードコート処理の総称で、「傷に強い(表面硬化処理)」「チリやホコリが付着しにくい(帯電防止)」「汚れが簡単にふき取れる(高い潤滑性)」というメリットを併せ持つ。商品名には「超硬」の名称が使われ続けているが、2005年1月からその技術についての名称は「DURABIS」に統一されている。(関連記事:“100倍”強いTDKの「超硬」――本当にどこまで強いのか)
「ユーザーが“良いもの”と“安いもの”を求めるのは当然です。ただ、重きを置かれるのは“良いもの”ですから、長期保存というDVDに求められる要求を満たすDURABIS(処理を施した製品)は受け入れられていると思います」
現在、同社製DVD-Rについては約10%、DVD-RWについては約15%の製品が、DURABISによる硬化処理を施されている。これが100%ではないのは、処理そのものが高価であるため、製品単価への反映が免れないからだ。しかし、DVDカム用の8センチメディアにはDURABISによる硬化処理を全面的に採用し、高付加価値商品としてのアピールを行っている。
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