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HD2+採用DLP機が35万円弱――BenQホームプロジェクター「PE7700」レビュー:劇場がある暮らし――Theater Style(3/4 ページ)

» 2005年06月24日 00時41分 公開
[本田雅一,ITmedia]

白ピークの伸びたパワフルでキレのある映像

 一方、コントラスト感の高さはDLPらしく、キレ味の良いダイナミックな絵だ。開口率が高いため透過型液晶パネル採用機で感じるメッシュ感はなく、色むらも感じられないため、非常にスッキリとして解像感の高い絵となる。同じ720Pでも第一印象では透過型液晶よりもよく見えるはずだ。

 本機はフルパワーモードで1000ルーメン、省電力モードで800ルーメンとなっており、省電力モードでは26デシベルまで動作音が抑えられる。ノイズは低周波数帯域が中心で、省電力モードの場合はさほど気にせずに使えるはずだ。しかも省電力時にも800ルーメンとかなり明るい。

 コントラスト比は2500:1のスペックでHD2+採用機としてはやや低め。しかし、視覚的には十分に高いコントラスト感はあるので、その点は安心していい。20万円クラスの液晶プロジェクターからのステップアップに見合う差はある。全体に明るいプロジェクターのため、黒はやや浮いて見えるが、その分、白ピークがきれいに伸びているため、全体のコントラスト感は良好でパワフルな元気の良い絵を見せてくれる。

 たとえばゲイン1のスクリーンに100インチ程度で投影した場合でも、高輝度のシーンではハイライトが強烈に眩しく見える、というぐらいのパワーはある(省電力モード)。100インチ以上かつゲインが低めのスクリーンでも、省電力モードでパワー不足を感じることはないはずだ。

 一方、本機の難点は単板DLPゆえの低輝度シーンにおける階調の描き分けとノイズ感だ。彩度を全体に引き上げた感のある絵作りも相まって、ややノイズ感が強調される印象。階調に関しても低輝度シーンは疑似輪郭が目立つ部分もあり、誤差拡散ノイズも気になる。

 ただしコントラスト感の高さや開口率の高さからくる高い解像感などと天秤にかけると、そうした単板DLPの弱点も気にならないという読者も多いだろう。100万円クラスはともかく、35万円なら検討したいと思うユーザーは少なくないはずだ。

 なお、単板DLPのもうひとつの弱点であるカラーブレーキング(RGBが分離して見える現象)は、5倍速駆動ということもあってか、激しく視線を異動させた時以外はさほど目立たない。同じ5倍速のDLP同士で比較した場合、特別に色割れしにくいわけではないが、特にカラーブレーキングに敏感な人でなければ大きな問題は感じないだろう。

まとめ

 昨年末、シャープがHD2+を搭載したXV-Z2000を40万円を下回る価格で投入したが、それがとうとうHD2+で35万円を切るレベルにまで落ちてきた。全体の絵作り、特にアナログ入力時の色は、マニア的な視点ではやや見栄え重視で作りすぎの印象だが、幸いなことに調整での追い込みは可能である。またパワフルな上に動作音が静かという点も評価したい。

 レンズシフト機能を備えないため、設置計画は入念に練る必要があるが、短焦点ということもあり、テーブル置きでも80インチクラスの投写サイズは十分に得られる。もちろん、背後に逆さまに棚置きしたり、天吊りで設置するならばさほど問題はないだろう。わずかなキーストン補正程度ならば、画質低下はさほど感じないハズだ。

 今回、「イヴォンヌの香り」「Mr.インクレディブル」(以上DVD)、「コンタクト」「X-MEN2」「アップルシード」(以上ハイビジョン録画)で視聴した。X-MEN2ではローライト部分のノイズ感が、コンタクトでは全黒からフェードインするシーンで空の疑似輪郭が目立ったものの、価格以上の価値は十分に感じることができた。またアニメ系のソースとのマッチングはとても良い。ハイビジョンのダウンコンバートも、ソースの解像感を720Pという枠の中で十分に引き出す。

 年内には透過型液晶パネルを用いた1080P対応のフロントプロジェクター登場が期待されているが、ここまでの低価格化はできない。その前にHD2+採用のシネマ用DLPが欲しいならば、冒頭でも述べた東芝の新製品と共に、入門機からのステップアップとして検討するべき価値のある製品である。

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