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カーナビが車のインテリアに溶け込む?――「Windows Automotive 5.0」発表

» 2005年07月12日 22時49分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 マイクロソフトは7月12日、Windows CE 5.0ベースの車載情報端末向けのソフトウェアプラットフォーム「Windows Automotive 5.0」を発表した。カーナビ画面のルック&フィールを容易に作り替える「AUI」(Automotive UI Toolkit)などが特徴。その車のイメージやインテリアデザインに合わせた画面作りを提案する。

photo 米Microsoft Automotive事業担当副社長のトッド・ワーレン氏

 発表会で挨拶に立った米Microsoft Automotive事業担当副社長のトッド・ワーレン氏は、「カーナビ先進国である日本の市場要求に応えるため、日本の開発チームが主導して開発した」と日本市場へのコミットを強調する。事実、カーナビの世界市場は2005年で約620万台。その半分強に当たる340万台が日本向けだという(パイオニアの調査による)。

 「とくに新車販売におけるメーカー純正カーナビの装着率は年々上がっており、2004年はライン装着とディーラーオプションを合わせて装着率は67%に及ぶ。既にカーナビは、エアコンなどと同じ“車の基本機能”となった」(同社オートモーティブビジネスユニット、シニアアカウントマネージャーの清水尚利氏)。

photo 同社オートモーティブビジネスユニット、シニアアカウントマネージャーの清水尚利氏

 マイクロソフトは、1998年の「Auto PC 1.0」以来、Windows CEベースの車載情報端末向けソフトウェアプラットフォームを提供してきたが、当初は米国市場を意識した仕様だったこともあり、ごく限られたメーカーしか採用しなかった。しかし前バージョンまでの「Windows Automotive」は、国内メーカー7社が採用(アルパイン、クラリオン、ケンウッド、鳥取三洋電気、パイオニア、松下電器産業、三菱電機)するなど、着実に浸透しつつある。

 「細かい数字は出せないが、HDD搭載ナビに限れば、Windows Automotiveのシェアはかなりのもの。ITRONや組み込みLinuxといったOSはあるが、開発キットを含むプラットフォームとして提供されているのはWindows Automotiveのみ。競合といえるものはない」。

photo 発表会場には、三菱「CU-H9700MD」、パイオニア「AVC-ZH990MD」などWindows Automotive採用のカーナビが勢揃い

 さらに清水氏によると、DVDナビからHDDナビへの移行や携帯電話のハンズフリー通話が、追い風になっているという。もともとWindwos Automotiveは、競合OSに比べてOS自体のサイズが大きく、起動の遅さやメモリ容量がネックになっていたが、カーナビがHDDを搭載するようになって容量の問題はクリア。そして携帯電話との連携を考慮したデータ通信機能は、「各メーカーが最初から作るより、既に豊富なミドルウェアを持つWindows Automotiveを使うほうが、早く、低コスト」(同氏)とアピールする絶好の機会になっているという。

高級なインテリアには高級な画面?

 Windows Automotive 5.0は、Windows CE 5.0ベースのリアルタイムOSと、その上で動く「Automotive Components」、各種開発ツールなどで構成される。バージョン5.0では、画面のルック&フィールを容易に作り替えることができる「AUI」(Automotive UI Toolkit)の強化と、システムリソースを検証する「AST」(Automotive System Tools)の追加が二本柱だ。

 AUIは、各アプリケーションのUI(ユーザーインタフェース)描画を担当する。このため開発者は、アプリケーションごとにUI画面を作り込む必要がない。またPC用ソフトでお馴染みの“スキン”を使い、アプリケーションのプログラムを変更せずに画面イメージだけを刷新できる。たとえばウッドパネルを備えた車に合わせ、木目調のスキンを作成すれば、車のインテリアに統一性が生まれるというわけだ。

photo 高級車のインテリアイメージ。緑色のインテリアに合わせ、同色のスキンを使ってカーナビの画面を構成している
photo オーディオプレーヤー画面。やっぱり緑

 マイクロソフト・プロダクトディベロップメント・リミテッドITS戦略統括部の平野元幹統括部長は、「最近のカーナビは、7〜8型の大型スクリーンを搭載し、インテリアの中でも重要な位置を占める。とくに高級車であれば、画面内のUI(ユーザーインタフェース)にも相応のデザイン性が求められる」と指摘する。純正品やディーラーオプションとして販売するカーナビを開発する場合には、AUIが魅力的なフィーチャーとなるだろう。

photo マイクロソフト・プロダクトディベロップメント・リミテッドITS戦略統括部の平野元幹統括部長

 また、AUIは画面サイズの違いも吸収するため、8インチの大型画面でも、1DINサイズの筐体に収まる小型液晶画面でも、やはりプログラムに変更を加える必要がない。「開発期間を短縮しながら、メーカーは複数のモデルを並行して開発できる」(平野氏)。このほか、アンチエイリアスフォントや各種フィルタ機能などもサポート。Direct 3D対応グラフィックチップのハードウェア処理も利用できるようになった。「発熱の問題があるため、最新のGPUを使うことはできない」ものの、従来より高品位なグラフィックを描画しながらCPUの負担を減らすことができる。

photo 8インチの大型画面であっても、1DINサイズの筐体に収まる小型液晶画面でも並行して作業を進められる。また、モダンデザインのスキンやウッド調の落ち着いたデザインのスキンにも適用可能

 一方の「AST」(Automotive System Tools)は、システムリソースの検証ツールだ。カーナビのような CPUパワーやメモリなど限られたリソースの中で“やりくり”しなければならず、従来は各メーカーの開発者が個別にシステムをチューニングすることで対応してきたという。

 ASTはリソース配分を自動化してくれるものではないが、どのプログラムの、どのスレッドが、どれだけのリソースを消費しているかを一覧表示してくれる。「カーナビでは、常時200ほどのスレッドが動いている。遅延時間などバランスを検証するにはASTのようなツールが必要不可欠」(平野氏)。開発者は、ASTの画面を参照しながら、たとえばメディアプレーヤーなどリアルタイム性が求められるソフトにリソースを優先的に割り当てるといった調整を行えばいい。

photo リソース配分の失敗例をデモ。メディアプレーヤーと3D地図表示しているときに、もう1つ3Dアニメを動かした途端、メディアプレーヤーにコマ落ちが発生する

 「カーナビの高性能・高機能化競争は一段落し、信頼性や品質感、使いやすさに重点が移った。Windows Automotive 5.0は、成熟期に入りつつある車載情報機器の開発ニーズを捉え、開発者の負担を軽減する」(平野氏)。なお、Windows Automotive 5.0対応製品は、今後1年程度で市場に登場する見通しだ。

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