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コラム
» 2005年08月01日 11時00分 公開

急速に拡大するVOD事業の夢と現実(前編)小寺信良(3/4 ページ)

[小寺信良,ITmedia]

新たに存在する縛り

 VODを楽しむというときに、我々はまずどのような条件をクリアしなければならないだろうか。これが2〜3年前ならば、VODへのしきいの高さとして、まず最初に回線速度があった。ところがADSLの爆発的な普及がきっかけとなって、各家庭の回線速度は飛躍的に向上した。さらにBフレッツや都市型CATVの普及で、今や日本も韓国に若干遅れを取りながらも、ブロードバンド大国といって差し支えない状況まで来た。

 むしろそうなってからの問題は、回線速度は速いのに、それを使い切るコンテンツサービスがない、というところにある。元々はVODを目指してそこまでやってきたはずなのに、いざ利用しようと思うと、様々な縛りがあることに気付く。

  • プロバイダ縛り

まず最初の縛りは、プロバイダである。Yahoo! BBが提供する「BBTV」や、ぷららの「4th MEDIA」といったISP運用型のVODサービスは、各ISPの利用者にのみに限定される。

 ブロードバンドとはいっても、まるでケーブルテレビのように、本当にテレビだけを見るためにB.フレッツに加入するという家庭は、ほどんどない。回線はほぼインターネットへの接続のために使われるわけだが、じゃあプロバイダはどこにしましょうか、と聴かれても、今となってはどこでも大差ない。

 そこでVODが引っ張り出されて来るわけである。従来のVODサービスは、ISPの差別化と販促のために利用されてきたという側面が強い。

  • 回線網縛り

 次の縛りは、回線網縛りである。東西NTTのIPv6ネットワークを利用する「オンデマンドTV」は、プロバイダは問わないが、回線網にVODの配信センターが直結しているという構造から、Bフレッツの利用者であることが条件となる。

 パワードコム、三菱商事、ネオ・インデックスの3社が始める「ネクステンシブVOD」も、特に回線網に関しての条件は発表されていないため、将来的には広域のサービスとなるのかもしれないが、母体が母体だけに基本的にはパワードコムのFTTH回線上に載るサービスだと思っていいだろう。IP網ではないが、ケーブルテレビのSTBを使って視聴するVOD「エラボ」もCATVへの加入が必要ということで、ある意味回線縛りの1つと考えられる。

 これらのVODサービスは、プロバイダに依存しないため、顧客に対する間口は広い。しかし回線がそれでなければならないという縛りがある以上、物理的に導入が無理なケースも出てくるだろう。

  • PC縛り

 しかし最近では、プロバイダや回線の縛りを排除したVODサービスも誕生してきている。USENが運営する「GYAO」は、完全無料放送というインパクトで既に登録者数は100万人を突破しているという。おどろくべき数字だが、これを成し遂げた理由は、ブロードバンド回線ならプロバイダや回線網は問わない、という間口の広さにある。

 ただし「GYAO」の視聴は、あくまでもPCがベースとなる。いわゆるテレビ側のソリューションやIPv6ソリューションとは違って、かつてPCがストリーミング技術で夢見た世界を実現したものである。このほかのVODサービスも、特にSTBが必要ないというサービスは、視聴にPCが必要になる。

 インフラの縛りがなく、パソコン縛りもないという両方の条件を満たすのは、デジタル・ネットワーク・アプライアンスが提供するVOD「でじゃ」ぐらいだろうか。プロバイダや回線にも縛られず、I-DVPという端末を接続して、テレビで番組を試聴する。ただし「こだわり映像」を自認するだけあって、コンテンツの品揃えが若干特殊である。

VODが普及するための条件

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