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コラム
» 2005年08月29日 12時00分 公開

小寺信良:デジタルテレビに潜む危険と脆弱性 (2/4)

[小寺信良,ITmedia]

放送データがファームを破壊するという現実

 3日に約束どおりシャープのサービスマンが現われて、状況を確認した。実は筆者も知らなかったのだが、このテレビの背面にはサービス用のSDメモリーカードスロットがある。そこにファームウェアのアップデータを記録したSDメモリーカードを突っ込んで、約1分弱でファームウェアの書き換えが完了。無事筆者宅のテレビは、テレビとしての本来の機能を果たすようになった。

 さんざんリセットなどを行なったつもりだったのだが、筆者が設定した内容は完全にそのまま残っていた。つまり故障中は、リセット行為すらも受け付けていなかったことになる。

 アップデートの間、サービスマンに今回の原因を尋ねてみた。するとどうも、8月1日未明に、CSデジタル放送が新しいロゴマークを配信したときに、本機のファームウェアを壊してしまったようだという。詳しく聞くと、この現象はAD5シリーズのうち、まさに26インチモデルであるこの機種だけに起こり、同シリーズであってもほかのサイズのものは影響を受けていないという。

 ほとんどのメディアでは取り上げていないが、それから5日後にシャープのサイトにもこの状況が報告された。同モデルのうちでも、特定の製造番号のものに限られるようだ。シャープサイトでは製造番号として「1311162〜1312659、1314162〜1321721」と書かれているが、仮にこの型番が1番ずつ振られるものだとしたら、前者の範囲で1498台、後者の範囲で7560台ということになる。合計すると、最大で9058台のテレビが一撃で映らなくなった可能性があるというわけである。

 改めてデジタル放送経由で新しいファームウェアが受信できれば、自動的に更新できただろう。だが今回の故障は、放送波を受信できない状況にまで完膚無きまでにファームウェアが破壊されてしまったため、シャープのサービスマンが日本中を走り回って、1台1台ファームウェアを入れ替えて回っているというわけである。

 今回のトラブルは、規模として大きいのか小さいのか微妙なところだが、たまたま筆者が該当するテレビを持っていたというだけで、おそらく他社製のデジタルテレビでも、大なり小なり故障の話はあることだろう。だが今回、一般的に言われる故障ともっとも異なっている点は、故障の原因が「製造過程や設計による、機械的なものではない」というところにある。

 デジタル放送対応機器というのは、テレビに限らずレコーダーなどでも、放送波を使ってファームウェアの更新を行なうことが可能だ。従来の家電はほとんどのものが売り切りで、後々機能が更新されることなど考えられなかったわけだから、ある意味これは非常に画期的なことである。

 世の中の状況に合わせて、既に購入した家電も進化すべきという筆者の持論は変わらないが、まさかデジタルテレビがこれほどまでに脆弱なシステムであるとは、予想していなかった。本来は社会へと開かれた家庭の窓であるべきテレビが、一夜にして何ひとつ機能しなくなるという現実が、ここにある。

 物騒な考え方をすれば、悪意を持った誰かがメディアテロを起こそうとすれば、結構簡単なのではないかとも思える。全国で一斉に強力な違法電波を送信して、テレビのファームウェアを破壊するようなデータを送信してしまえば、日本中のテレビが役に立たなくなる。そんな可能性はまったくゼロであると、果たして言い切れるだろうか。

この脆弱なシステムが個人情報を抱えている

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