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デジタルテレビに潜む危険と脆弱性小寺信良(3/4 ページ)

» 2005年08月29日 12時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

この脆弱なシステムが個人情報を抱えている

 もう一つ、デジタルテレビに関する物騒な話をしよう。デジタル放送対応テレビでは、双方向通信機能を利用して、クレジットカードでのショッピングが可能だ。番組の内容と連動したテレビショッピングは、コマーシャルに代わる放送局の新しい収入源として、注目されている部分でもある。各局はそれぞれ会員登録ページをデータ放送内に設けて、住所、氏名、電話番号、生年月日などの情報を収集している。

 では、このクレジットカードの番号も含むこれらの入力された個人情報は、そのあとどうなるかご存じだろうか。実は、放送局に送信されるだけではなく、テレビ内部にも記録が残るのである。

 B-CASカードにも、このような個人情報を記録するエリアがある。メーカーによっては、このエリアを利用するものもあるだろう。だが本体内のメモリ領域に記憶する製品もある。個人情報をどこに記録しておくか、またデータをどのように暗号化するかなどの判断に関しては、すべてがメーカーまかせになっており、共通のガイドラインなど存在しない。

 もしデジタルテレビを廃棄したり他人に譲ったり、あるいは修理に出すときは注意した方がいい。うっかりしていると、あなたの個人情報が抜き取られる可能性がある。もし廃棄したり、他人に譲ることになったら、これらテレビ内部に保存されている個人情報を、事前に初期化しておく必要がある。

 例えば筆者宅のシャープAQUOSのマニュアルには、「本機を譲渡・廃棄するとき」という項目で、個人情報を削除するための手順を示すページがある。特に「B-CASカードを挿した状態で」などの注意書きもないので、おそらく本体内のメモリに記憶されているのだろう。

 だがこのテレビを廃棄するときまで、このような初期化をしなければならないということを覚えていられるだろうか。また故障により廃棄する場合に、この初期化が機能しなかった場合はどうなるのだろうか。

 また廃棄しないまでも、同メーカーのリモコンを使って、向かいの部屋の人が窓越しにあなたのテレビにアクセスするかもしれない。会員情報は、せいぜい4ケタの暗証番号で保護される程度だ。忘れないように紙に書いてテレビの下にでも貼っておいたら、ある日突然注文した覚えのない特上にぎり寿司30人前が届けられるハメになるかもしれないのである。

 この問題に政府もようやく気付いたようで、現在総務省が各メーカーに対して、個人情報をテレビにどのような形で記憶しているのか、実態調査を行なっているという。もしかしたら1〜2年後に何らかのガイドラインができるのかもしれないが、それ以前に購入したテレビでは一体どうなるのだろうか。これもファームウェアのアップデートでなんとかしてくれるのだろうか。

シンプルなテレビの存在も認めるべきでは

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