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コピーは“禁止”ではなく“いかに許すか”――HD DVDのコンテンツ保護

» 2005年10月06日 21時38分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 DVD規格の標準団体であるDVDフォーラムは10月6日、都内で「DVD Forum Japan Conference 2005」を開催、同団体が「次世代DVD」として推進するHD DVDのコンテンツ保護技術について、東芝 上席常務待遇 デジタルメディアネットワーク社 首席技監の山田尚志氏が説明を行った。

photo 山田尚志氏。「CSSの策定時には6週連続で日米を往復した結果、入院した人がでるほどでした(笑)」と当時のハードさを物語る

 山田氏は「コンテンツ保護は技術だけでは解決しない難しい問題で、CSS(Content Scrambling System :DVDビデオに用いられている保護技術)の策定時には6週間連続で日米を往復したほど」と当時を振り返りながら、「近いうちに、大量のセールスが見込めるタイトルだけがパッケージ化されて店頭に並び、そうでないタイトルはサーバから必要に応じて提供されるというかたちが想定される」と“パッケージコンテンツはメディアに記録し、CSSで保護した状態で流通させる”というこれまでのスタイルの限界を示唆した。

 HD DVDに利用される新しいコンテンツ保護技術「AACS」(Advanced Access Control System)は1つのテクノロジーでパッケージソフトから追記型、書き換え型、ネットワークを利用するコンテンツ提供にも適用できるように策定が進められている。HD DVDにおいて、DVDのCSSに代わる存在であるほか、「HDビデオ全般に適用可能であり、包括的なコンテンツ保護技術」としても位置づけられているよう、強固なセキュリティ性と高い柔軟性を併せ持つのが特徴だ。

photo ACCS規格化の狙い

 セキュリティ性については、128ビットAESによる暗号化が行われるほか(CSSは40ビット)、1台単位で行える機器無効化、双方向ドライブ認証とホスト/ドライブの無効化、コンテンツの認証および無効化、ウォーターマークによる海賊版メディア再生防止機能などが盛り込まれている。

 ウォーターマークによる海賊版防止機能は、映画フィルムの音声部分にウォーターマークを追加することで、映画館でカムコーダー撮影された映像(メディア)が市販のプレーヤーなどで再生できないようにする機能。劇場公開された直後の作品でも、カムコーダー録画による海賊版が流通している現状を受け、ハリウッドから要望があったそうだ。

 運用の柔軟性については「Managed Copy」という考え方が導入されており、単純にコピーできる/できないではなく、提供者が許す限りの枚数までのコピー作成や、購入したメディアをそのままのクオリティでホームサーバーに蓄積し、接続されたクライアント(TVやPC)で視聴するという事も可能になる。

 「これは正式な決定ではないが、コピーをいくつか作りたいという場合、購入時に申請すればインターネットを使ってのアクティベーションを行うというプランもある。単純にコピーを禁止すればいいという話ではなくなっている。今は“いかにセキュリティの高いところでコピーを許すか”という段階に来ている」

 AACSは10月末には仕様書とライセンス文章の公開、ライセンス開始が10月末から行われ、11月末にはカギの提供も行われる予定。ライセンスは一般的なライセンシー向け(機器製造業者など)の「Adopter Agreement」と、コンテンツ提供者向けの「Contents Participant Agreement」が用意される。ウォーターマークについてはAACS外のライセンスをサブライセンスする可能性があるほか、ディスク製造者/オーサリング業者向けにAdopter Agreementの簡略版も用意される方向で検討が進められている。

 なお、ACCSはHD DVDのほか、Blu-ray DiscやDVD9でも採用される予定だが、技術や運用の詳細まで同一というわけではなく「アルゴリズムの基本が同じであるだけ」(山田氏)というレベルにとどまる見込みだ。

photo ACCSはBlu-ray DiscやDVD9でも採用される予定

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