10月25日、都内のホテルで2005年度グッドデザイン賞の「大賞選出および表彰式」が開催され、グッドデザイン賞のグランプリにあたる「グッドデザイン大賞」が決まった。多くの支持を得て大賞に輝いたのは、テルモの「ナノパス33」。0.2ミリという世界一細いインスリン用注射針だ。
グッドデザイン賞は、1957年に通商産業省が創立した「グッドデザイン商品選定制度」(通称:Gマーク制度)により生まれたデザイン評価・推奨制度だ。今年度は過去最多の3010件が応募。審査委員会が2カ月をかけて審査を行い、既に1158件の「グッドデザイン賞」と各特別賞が決定している。
また今年から「日本から世界へ新しいデザインを発信していく」という方針のもと、海外審査員も参加して「ベスト15」を選出、その中から“大賞”を決めるスタイルになった(関連記事)。グッドデザイン大賞の選出方法はこれまでと同じで、ノミネート作品(ベスト15)の各デザイナーがプレゼンテーションを行ったあと、グッドデザイン賞の全受賞者と審査委員による投票が行われる。
1度目の投票では、各作品の得票差が少なく、上位5作品――松下電器産業の「電池がどれでもライト」、アップルの「iPod shuffle」、東芝メディカルシステムズの「大口径マルチスライスCTスキャナー」、竹村真一氏/岩政隆一氏の「触れる地球」、テルモ「ナノパス33」――による決選投票が行われた。その結果、ナノパス33が4割近い票を獲得し、“グッドデザイン大賞”に決まった。
テルモ、DMカンパニー開発技術部の大谷内哲也氏によると、ナノパス33を開発したきっかけは、「子ども(の患者)に“針が痛い”と言われたこと」。糖尿病で毎日インスリンの自己注射を行っている患者は、日本国内だけでも約60万人といわれ、また一日に何度も注射をしなければならない人も多い。「インスリン注射を止めることはできなくても、その痛みを少しでも和らげることに貢献したかった」。
約5年をかけて開発したナノパス33は、従来の注射針よりも約20%細く、「患者さんたちには“痛くなくなった”と好評」。壇上で喜多審査委員長から賞状とトロフィーを手渡された大谷内氏は、「今後も人に優しい医療を目指していきたい」と喜びを語った。
喜多審査委員長氏は、「デザインという言葉は、広い間口を持っている。しかし今回は“小さな小さな、それでいて力のある一点”に集約された」と評価する。また、グッドデザイン賞を主催する日本産業デザイン振興会の久禮彦治理事長も「ほかの金賞作品と比べると見た目は地味だが、このような地味な活動が評価される賞であり続けたい」と話していた。
なお、ベスト15にはヤマハのエレクトリックコミューター「EC-02」、プラマイゼロの加湿器「XQK-P020」なども含まれており、これら14作品は「グッドデザイン金賞」を受賞している。「ベスト15該当作品は、世界のどこに出しても恥ずかしくないものだ。今年は全体的にレベルが高く、新しいデザインの潮流が見えてきたように感じた」(喜多氏)。
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