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究極の取材ツールを探す小寺信良(1/3 ページ)

» 2005年10月31日 12時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 相手の言うことをメモしたい、だけど自分も考えて発言したい。そういうシーンにおいて、小型のレコーダーは便利なものだ。そこに置いておけばすべての言葉を記録してくれるので、自分でメモを撮る必要がない。ビジネスシーンでも、会議やプレゼンの記録用として活用する人は、かなり増えてきているようだ。

 音声を記録するボイスレコーダーは、以前から取材記者などが使用してきた。筆者もときどき取材などを受けることもあるので、注意して見ているのだが、案外、新聞・雑誌などの紙メディアの記者やライターが使っているレコーダーは、えらく旧式のカセットテープ型だったり、MD型だったりするものである。

 そして何よりも象徴的なのは、割と若い人でも取材メモなどにPCを使わないことだ。だいたいメモ帳かノートにボールペンでぐりぐりッと手書きしている。今どき原稿用紙で入稿するところもないだろうから、最終的にはPCで原稿を書くのだろうが、それまでは手書き、というのがいかにも紙メディアの人らしい。

 変わってIT系メディアの記者になると、レコーダーはIC型レコーダーがデフォルトとなる。そしてメモを取るのはほとんどノートPCだ。メーカーの製品発表会などでその手の記者が一堂に会すると、レコーダーを使わずに相手の発言を逐一リアルタイムで入力していく強者も少なくない。

 年齢層の差ではなく、どうしてメディアのジャンルによってこのような差が生まれるのかと考えてみると、それはどうもメモリやPCといった電子機器をどれぐらい信用しているかの問題なのかな、という気がする。

 テープレコーダーやMDは、回転しているのが目に見えるため、ときおりのぞき込んではああ回ってるな、と確認できる点で安心感があるのだろう。一方でICレコーダーは、メモリという目に見えない媒体に音声という不定形のもの記録して、本当に大丈夫なのか? という感じがある。

 普段から、自分も含めて周りの人も同じようなものを使って仕事をしているのを見ていると、安心感が出てくる。IT系記者は仕事柄そのような電子機器に触れる機会も多いのに対し、紙媒体の記者は周りの人もあまり使わないので自分も使わない、ということなのかもしれない。

ボイスレコーダーの限界

 筆者自身はICレコーダーを使い続けて、もう3年あまりになる。使っているのはオリンパスのVoice-Trek DS-10というモデルだが、これまで一度も録音したファイルが消えたとかメモリが飛んだとかいったことはなく、非常に信頼している。

 しかし場合によっては、ボイスレコーダーではいかんともし難いことがある。例えば複数人にインタビューするときなどだ。筆者の場合は仕事柄インタビューになるわけだが、ビジネスでは会議であったり、打ち合わせに行ったら先方が3〜4人出てきた、というときに、誰がそれを言ったのかが重要になるケースを想像していただきたい。

 その中に女性が混じっていれば、音声だけでもかなり聞き分けが可能だが、男性が4人以上になると、音声だけではなかなか聞き分けが難しい。そのためにステレオ録音するのだというICレコーダーもあるが、これは相手がどの席順で座ったかを覚えておかなければ意味がない。初対面の相手だと、そこまではなかなか難しい。

 筆者は何度かそれで困った経験があったので、別の方法を編み出した。録音ではなく、ビデオとして録画したらどうか、と考えたわけである。かといってDVカメラを持っていったのでは荷物になりすぎるので、当時出たばかりの三洋電機「Xacti C1」をボイスレコーダー代わりに使い始めた。

 これが思いのほか使い勝手がいい。そもそも誰がしゃべったのかがわかればいい程度の動画なので、それほど高画質で撮る必要はなかったし、何しろ集音性能が良かった。映像が低ビットレートでも、音声記録までは落ちなかったし、ステレオで撮れるため、分離感がいい。

 この方法は、製品発表会やプレゼンを聞くときにも効果を発揮した。Xactiは動画を録画しながら、それを止めずに高解像度の静止画が撮影できる。話を録画しながら、要所要所でプレゼンの画面を撮影できるのだ。もちろん記事で使えるほどの絵ではないが、小さな録画画像では読めない文章や数値などを後で確認するときに、非常に役に立った。

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