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世界の反対側で仕事をする方法小寺信良(3/3 ページ)

» 2006年01月23日 09時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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 先ほどのグラフにこのスケジュールを当てはめてみると、日本時間ではいわゆる夜番の仕事のスケジュールであるが、一昼夜の徹夜仕事というわけでもない。実際には諸処の都合もあり、日々完全にこのスタイルを強行したわけではないが、少なくとも上記に上げたように睡眠に関して無理をせず、かつ徐々に就寝の時間を後ろにずらしていくことで、これまでの渡米取材ではまず感じたことがなかったほど、体が楽になった。

 なにより、眠くてしょうがないときにいくら仕事を頑張っても、時間ばかりかかってちっとも生産性が上がらないものだ。またそんな状態で頑張っても、いい仕事はできないのである。

 だがそうは言っても、短期の海外滞在でなかなかここまでの踏ん切りが付かないのは、やはり現地の生活に合わせて仕事したり遊ぼうとしてしまうことと、もう一つは普段の生活の常識に囚われてしまい、本能の趣くままに寝たり起きたりするのは行儀が悪い、と思ってしまうところだろう。だがその常識の部分を解放してやれば、時差ボケにまつわるデメリットはかなり排除できるのではないだろうか。

 現地の約束事として守らなければならないのは、とりあえず昼間の約束と食事時間である。特に食事に関しては、日本のように何時でもコンビニで食料にありつけるという状況は、海外ではあまり期待できない。治安の問題もあるのだろう、居住区において深夜営業の店はあまり多くないのである。したがって現地でのメシ時に食事をしてしまわないと、食べそびれてしまうことになる。だがこの2点さえ外さなければ、夜の時間の使い方は自由である。

 この方式の難点は、日本で仕事の成果を待っている場合に、期待に添えないというところである。例えば無理しても現地時間の午前0時に仕事が完成すれば、日本時間では午後5時である。その日の成果としてまとめるには、ギリギリ間に合う時間だ。

 だが現地時間で朝7時に仕事が上がっても、日本時間では午前0時である。その時間まで待機するのは、日本側でかなり無理をしなければならないし、そこまで待機した割にはその日の分の成果にはできない。したがって翌朝1番の成果として取り上げることになる。そうなると仕事の成果としては、完成してから約9時間から10時間、寝かしておくことになってしまう。

 確かに仕事の流れを止めないという価値観で見れば、この時間はもったいない。しかし事前にこの時間も織り込み済みで進行すれば、朝っぱらから日本でも全力で動ける体勢が作れるということでもある。

 時差を吸収するという作業は、人によっては造作もないことであったり、またオオゴトであったりする。このオオゴトであった場合は、一時的に無理をしてダメージをずっと引きずっていくよりも、無理のない方法で乗り切ったほうが建設的なのである。

 まあなんだかんだ言って、歳を取っていくほど仕事しないで寝ちゃいましたという言い訳も巧妙になるというだけのことかもしれないが。


小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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