今年の春は、魅力的なビデオカメラ新製品が目白押しだ。それも、長年ビデオカメラの主役を張ってきたDVカメラではなく、DVDやHDD、そしてハイビジョン対応のHDVなど新しいメディアの台頭が著しい。
毎回、AV業界の最新情報や、独自の分析、インプレッションなどを聞き出す月イチ連載「麻倉怜士の『デジタル閻魔帳』」。今回は“ビデオカメラウォッチャー”としても有名な麻倉氏に、メディアの多様化が進むことで活況を呈している現在のビデオカメラ市場について語ってもらった。
――ビデオカメラ市場が賑わってますね。
麻倉氏: 昨年からDVDやHDDなど新しい切り口のビデオカメラが激増、売れ行きも上々といいます。もともと日本でのビデオカメラ市場は150万〜160万台ぐらいで横ばいに推移してきたのですが、こうした新しい動きから久々にビデオカメラのブレイクの兆しが見られます。
――特徴は“新しいメディアの台頭”でしょうか?
麻倉氏: メディアの流れをみると10年のサイクルがあります。1975〜76年に出たベータやVHSの据置型レコーダに続いてカメラとVTR部で2ピースのセパレート型のポータブルビデオカムコーダが登場し、それから10年後の1980年代半ばに8ミリやVHS-Cが出て2ピースからカメラ部とレコーダ部が一体型となったいわゆるカムコーダー(カメラ+レコーダー=Camcorder)となりました。それからさらに10年後の1995年にDVカメラが登場してデジタルの時代が到来。それから10年後の2005年に登場したハイビジョンビデオカメラ「HDR-HC1」は、テープというメディアの中でSDからHDへというフォーマット進化の流れを作りました。
その一方で、今までVHS-C→8ミリ→→DVとテープできていたメディアが、2003年を境にDVD人気が浮上。さらにHDDやSDムービーも台頭してきました。このように10年単位というのが映像メディアにおける世代交代のメルクマールになっているのです。最初の3年は紹介の時期、4〜7年でぐっと普及させ、8年以降は刈り取り期となり、衰退する前に、そのあたりで次の新しいメディアを用意しなければいけないというサイクルになっているのでしょう。
――今回のビデオカメラの動きも10年周期の世代交代の1つなのですね。
麻倉氏: ただし、今回のメディア世代交代で特筆すべきは、メディアが多様化してきた点です。面白いのは、このメディアの多様化が、ユーザーニーズや社会的な広がりを持っているニーズから生まれたのではないというところ点です。VHS-C/8ミリ/DVテープいずれもビデオカメラ向けに作られた専門メディアですが、今回の新しい潮流では、DVD/HDD/SDメモリーカードといずれも元々ビデオカメラ向けではなく、ほかの世界で開発された汎用メディアなのです。むしろデジタル社会を支えるインフラとして開発されたものと言った方が正しいでしょうね。今回、複数のメディアが出てきた背景には、ビデオカメラというジャンルの中でメディアの変更が起こる時間が、他のジャンルよりも後になったことが挙げられます。それによって、他の分野・メディアで開発されたさまざまな新機軸が使えるようになったことが大きいですね。
ビデオカメラ専用だった従来メディアというのは、その狭い世界にしかとどまって広がりがなかったのですが、ほかの世界で活躍してきたメディアはビデオカメラで撮影した後も非常に大きな展開可能性広がりを潜在的に持っているのです。これが私をして「2006年はビデオカメラがブレイクするぞ」と言わしめている要因の1つです。
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