(C)2006国際スキージャンプ・ペア連盟 |
“1組のスキー板に2人が同時に乗ってジャンプ”という、前代未聞なスキージャンプ競技を描いたCG映像は、オモシロ映像とクソ真面目な実況がこだまする、1度見たら忘れられない代物。
もともとは真島理一郎氏がデジタルハリウッド卒業制作作品として作ったもので、2003年11月にはHMVサイトで限定リリースされ、翌月12月に全国発売。あっという間に話題となり、第7回「文化庁メディア芸術祭」エンターテインメント部門優秀賞を受賞した。国内はもちろん、40以上の国際映画祭で上映され、世界中を爆笑させた大ヒット作なのである。
さて、映画版はスキージャンプ・ペアが「オリンピック正式競技となるまでの歴史」を綴った擬似ドキュメンタリー=モキュメンタリー。これまでに数多くのドキュメンタリーを撮ってきた小林正樹氏が監督を務め、ナビゲーターに谷原章介氏を起用し、テレビドキュメンタリー番組の形をとりつつ、遊び心あふれるバカ映画になっている。
物語は1994年に遡る。北海道の物理学博士・原田敏文は、「特殊飛行体分裂論(ランデブー理論)」を発表。この理論を応用すれば、スキージャンプはペアで飛ぶ方が安定するという博士の見解に対し、世論の風当たりは強かった。博士は理論を実証すべく、双子の息子たちに夢を託す。やがて彼らの血と汗と涙の努力が実を結び、新競技スキージャンプ・ペアが誕生。映画は2006年開催のトリノ・オリンピックの正式種目になるまでの足跡と、その決勝戦の模様で構成されている。
映画版というから全編CGで競技をみせるのかと思いきや、チューチューアイスの分裂から端を欲したスキージャンプ・ペアの歴史を紐解いていくとは、これはもうアイデアの勝利。うさん臭い教授の熱弁、双子の兄弟による「巨人の星」バリの過酷(そうな)トレーニング、皇帝ヴィドヘルツルやカウリスマキ兄弟といったCG版の人気キャラクターの実写での登場、さらには船木和喜、荻原次晴、アントニオ猪木までもが実名で出演を果たすなど、思わず笑いがこみ上げてくる。
待望のジャンプも「トーテム」「ベルリン」「アルマゲドン」など爆笑必至の技が、茂木淳一アナウンサーの絶叫とともに繰り出される。でも、残念ながらジャンプシーンはCGです。
映像特典も大充実。北海道中央テレビで放映された映画公開記念特番は、原田教授と造詣の深かったスキージャンプ・ペア実行委員会会長の真島理一郎氏と小林監督が公開前日に出演した特番で、スキージャンプ・ペアの歴史を振り返るというもの。
もちろん、北海道中央テレビも、番組の存在も、番組中に挟まれるCMも全てウソ。このほか、アメリカのジャンパー、ジェフ&タイラーコンビの来日映像や双子の兄弟が歌う「父に捧げる空サッツ」の実写プロモーションビデオなど、限りなくホントっぽいウソの世界を楽しめる。
ハイテンションで鑑賞すれば、笑いのツボにハマるはず。いや、無意味なことを一生懸命にやる、製作者の徹底したバカの美学に目頭が熱く(!?)なるほど。サービス精神旺盛な「スキージャンプ・ペア」ワールドを堪能してください。
関連サイト:http://www.sjp-movie.com/(公式サイト)
|
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR