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コラム
» 2006年04月10日 11時00分 公開

小寺信良:「VODでハイビジョン」がもたらす衝撃 (3/3)

[小寺信良,ITmedia]
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――HD+5.1ch素材というのは、どういうフォーマットで搬入されるんでしょう。

谷口氏: 映像はHDCAM、5.1ch音声はHi8という組み合わせが多いですね。HDCAM SRだとテープ1本で済むんですが、なかなかこれで送ってくるところはないです。


 これに関して若干補足が必要だろう。SDでもそうなのだが、多くのテープフォーマットは音声トラックが4chしかないので、5.1ch、つまり6chのトラックが必要な納品はできない。そこでマルチトラックの音声は、TASCAMのDA-88/98といったHi8のテープを使うMTRを使って、別途添付するケースが多い。

 一方HDCAM SRは12ch、D5 HDは8chの音声トラックを持つため、HD+5.1ch納品には適している。だがサラウンド納品の仕事がまだそれほど多くないこと、さらにこれらのデッキが高価なため、なかなか普及していないのが現状だ。

――HDのストリームでは、トリックプレイなどもSDと同様快適にできるのか心配なところですが。

谷口氏: トリックプレイの負荷は、これまでと変わりません。先にトリックファイルを作っておくタイプのサーバなので、4Mストリーム(SDコンテンツは4Mbpsで配信している)なのか8Mなのかしか、VODサーバ上では違いがありません。我々からすると、負荷はどちらでも同じです。

――STBの出力にHDMIを搭載しなかったのは、コストの問題でしょうか?

谷口氏: デコーダチップ自体はHDMI出力をサポートしているので、コスト的にはコネクタ代の節約ぐらいにしかなりません。これは権利者さんとの折衝の中で、デジタルで出るよという話になるとややこしくなるなぁというところがあって、見送りました。デジタルの映像出力は、DRMが過渡期だと思うんです。旧来のアナログであれば、D3はCGMS-Aで、D2まではマクロビジョンでいいねと、それなりにコピープロテクションの手法が確実にわかっていたのが大きいですね。

利便性が高画質に勝つ時代

 地上デジタル放送は、MPEG-2 TSでビットレートはだいたい16Mbps前後と言われている。これに対してH.264で8Mbpsというレートは、圧縮効率からすると現時点ではほぼ同程度の画質が実現できるのではないかと予想される。

 オンデマンドTVのハイビジョンサービスは、画質は地デジと同程度だが、旧来のビジネスモデルであるメディア販売に比べて利便性が高く、コストも安く、コンテンツもHD DVD/BD陣営に関係なく、広く集めることができる。次世代DVD事業を「HDコンテンツ販売」という土俵に乗せての勝負と見れば、脅威となる可能性は十分にある。

 また画質にしても、MPEG-2では圧縮効率の限界がそろそろ見えてきたのに対し、H.264はまだまだ効率が良くなるマージンが広いのも特徴だ。オンデマンドTVとしては、同画質ならさらに低ビットレートで伝送する方向へ振るだろうが、事業体によっては8Mbps、あるいはそれ以上の帯域を使って、「放送品質を超えるコンテンツ配信」に舵を取るところも出てくるかもしれない。

 オンデマンドTVは、現在加入者数が約5万件、このままの伸びで行けば、今年度末までには10万件に届く勢いだ。またNTT東西の光接続サービス加入者は、2005年度末で347万件、今年度末には617万件に達する見込みであるという。もちろんこの数字すべてがハイビジョンサービス受信数を意味するわけではないが、潜在能力としては意外に大きいと評価していいだろう。

 画質としては、潤沢にビットレートが使える次世代DVDに軍配が上がる。だが、高画質がどこまで売りになるかというところは、考えてみる必要はあるだろう。筆者としてはおそらく、ハイビジョン対応テレビを初めて買うという世代が一巡したあとは、高画質は差別化要因にはならないだろうと考える。

 その頃の視聴環境は「もう高画質になった」という認識であり、消費者はそれ以外の部分で差別化を求めるようになる。つまり高画質に対する興味を、消費者が維持できなくなるのである。筆者はおそらくこの時期をあと5年程度、早ければ北京オリンピックが終了した3年後と見ている。

 そのとき映像コンテンツ販売事業は、どういった勢力図を描いているだろうか。

 オンデマンドTVでは、4月15日より「ハイビジョン先取り体験キャンペーン」を実施する。限定100台でハイビジョン対応STBを無料でプレゼントし、いち早くVODでハイビジョンの実力が体験できるという。申し込みは本日、4月10日までだ。急げ。


小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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