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「クルマのWeb 2.0」――ホンダ インターナビ・プレミアムクラブインタビュー(1/3 ページ)

» 2006年04月25日 19時12分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 カーナビは「道案内」を行うデバイスだが、近年の機能向上によって単純な道案内にとどまらず、「快適かつ迅速なルートを案内する」デバイスへ役割を変えつつある。そうなると重要になってくるのが、いかに外部の情報を迅速に取り込み、道案内へ反映させるかだ。

 本田技研工業が2002年10月から純正カーナビ対応サービスとして開始している「インターナビ・プレミアムクラブ」は、車側にも通信機器を搭載することで双方向ネットワークを実現し、単なる“カーナビ”を超えたサービスを提供している。

 そのサービスが提供しているものと、同社の目指すカーナビゲーションの方向性について、同社インターナビ推進室 室長の今井武氏に話を聞いた。

photo 本田技研工業 インターナビ推進室 室長 今井武氏

「正確な交通情報」を伝えるための独自サービス

――まず「インターナビ・プレミアムクラブ」とはどのようなものか、その歴史を含めて教えてください。

今井氏: 自動車などの移動体に通信システムを組み合わせ、リアルタイムに情報を提供するサービス、いわゆる「テレマティクス」と呼ばれるサービスは1997年ごろから実用化が進められてきました。

 ホンダ(本田技研工業)も1998年から独自のテレマティクスサービス「インターナビ」を提供しましたが、2000年ごろに会員へ要望点を尋ねたところ、第1位は“もっと正確な交通情報を迅速に手に入れたい”というものでした。

photo 「インターナビ・プレミアムクラブ」のサービスイメージ図

 そこで、2002年8月に提供開始したのが「インターナビ・プレミアムクラブ」です。これはインターナビのシステムに通信機能を搭載した純正カーナビを組み合わせることで、オンデマンド型VICSや車両メンテナンス情報を提供したり、ユーザーごとにカスタマイズされた専用ホームページを用意するサービスの総称です。地図データのアップデートもサービスに含まれます。

 ちなみに、2002年ごろはテレマティクスサービスが新世代に突入したタイミングで、トヨタ自動車の「G-Book」、日産自動車の「カーウィングス」もこのタイミングで各種の機能拡張を行っています。

 インターナビ・プレミアムクラブの利用に際しては純正カーナビを装着したうえで、携帯電話を接続してもらう必要がありますが(2006年2月からは専用PHSカードも用意されている)、2006年3月には会員数36万人を達成することができました。

photo 純正カーナビの搭載が必須となるが、近年の車種はカーナビの搭載を前提としたパネルデザインが施されているため、スッキリと収まる。専用PHSカードはカーナビに用意されているPCMCIAスロットに装着する

 ここで、日本で最も利用されているテレマティクスサービスである「VICS」について、説明しておく必要があるだろう。

 VICS(Vehicle Information and Communication System)は、1996年から提供されているリアルタイム渋滞情報提供システム。高度道路交通システム(ITS)の一環として警察庁や国土交通省などが共同で推進しており、実際の開発と運用は財団法人である「道路交通情報通信システムセンター」が行っている。

 VICSは道路上に設けられたセンサーから得られる情報をセンターで集計、FM波や道路上の発信器(ビーコン)で車へ送信する。近年発売されたカーナビはほとんどが対応しており、その数は累計で1400万台以上(2005年度末)にのぼる。ただ、このVICSにも弱点がある。

 当然ながらセンサーの設置されていない道路の混雑状況はわからないほか、システムの関係上、提供される情報は最大でも県単位(光ビーコンでは前方30キロメートル、電波ビーコンでは前方200キロメートルまでの情報が提供される)になっている。

 また、VICSには車線という概念がない。そのためにジャンクションなどで、A方向へ向かう車線は空いているのに、混雑しているB方向への車線情報を取得してセンターで処理してしまい、結果として“ジャンクション全体が渋滞している”という情報を配信してしまったりする。


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