パイオニアが6月上旬より販売開始するカーナビゲーションシステム「カロッツェリア サイバーナビ」(以下 サイバーナビ)の新製品は、「スマートループ構想」など先進の思想を盛り込み、同社がかねてから“エージェント”と表現するコンセプトをさらに押し進めた製品だ。
カーナビの究極的な目標は“快適なルート案内”だが、新しいサイバーナビはこのスマートループによって、どのようなナビゲーションを提供してくれるのか。同社 モーバイルエンタテインメントビジネスグループ 事業企画部 アフターマーケット企画部 企画2課 副参事の矢野健一郎氏に話を聞いた。
――まず、新しいサイバーナビを企画する上で念頭にあったコンセプトとはなんでしょうか
矢野氏: 詳細な地図情報など増え続ける車内データに対応すべく、パイオニアでは2001年からHDDカーナビを投入しています。これまでは車内に多くのデータを持ち込むことで快適なドライブを実現しようと努めてきましたが、より一層の快適さを提供するためには、外部情報を取り入れ、活用していくことが不可欠と判断しました。
これに、既に投入している、情報を統合的に判断してドライバーへ最適なカタチで提供する“エージェント”という概念と組み合わせ、製品化を進めました。具体的には「スマートループ構想の具体化」「カーナビゲーションとカーAV能力の進化」「新メディアとネットワークへの対応」「取り付け車種の拡大」という4つの要素が新製品に盛り込まれています。
――新たに導入された「スマートループ構想」とはなんでしょうか
矢野氏: サイバーナビのユーザー間で情報を共有することで、ナビゲーション能力全般の向上を狙うものです。その実現のため、情報をHDD&カーコンピュータ部の「ブレインユニット」に蓄積し、家庭に設置した「リビングキット」を経由してパイオニアのサーバへ送信すると、統計処理された情報がフィードバックされる「蓄積型プローブ」の機能を実装しました。
車両を一種の探査機(プローブ)と見なし、集められた実際の走行データを収集・分析することでより快適なナビゲーションを提供しようとする仕組み自体はそう珍しいものではなく、本田技研工業の「インターナビ」が同様のシステムを実用化している。
インターナビとサイバーナビとのいちばんの違いは、走行中の車両とセンター(サーバ)側が通信を行うか、行わないかだ。インターナビはナビに搭載された通信モジュールによって車内からデータの送受信を行うが、サイバーナビではデータは一度ブレインユニットへ蓄積され、利用者宅のインターネット回線を使ってセンターへ送られる。
――なぜ、通信機能を搭載して即座に車両から情報を収集/フィードバックできる通信型とせず、蓄積型としたのでしょうか
矢野氏: 現状ではナビに携帯電話を接続するか、通信モジュールを搭載しないと車両から通信は行えません。どちらの方法を採用しても、通信費は大きなネックになります。それに、日本全国どこにいても通信が可能とは言い切れません。センター側でデータを処理する時間も必要ですし、すべてのデータを車両から通信で即座にやりとりする必要はないと判断しました。
ブレインユニットはPCから音楽を転送することも可能ですから、音楽を転送する際にデータも送信してもらえればと考えました。ユーザーに「通信している」と感じさせないようインタフェースも工夫しましたし、家庭に普及しているブロードバンド回線のメリットも活用できます。
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