――実走データを収集して解析する以上、サンプルとなるデータがどれだけ集まるかがポイントになります。どれぐらいの数が集まれば十分といえるレベルなのでしょう
矢野氏: たくさん集まることにこしたことはありません(笑)。わたしたちはスマートループに対応したサイバーナビの出荷台数を約10万台と予測していますが、仮に1割のユーザーがデータをアップロードしてくれたと仮定すれば、1万台のカーナビから実走データを収集できます。これだけ情報が収集できれば、かなり精度の高いデータが提供可能になります。
ただ、全国各地にサイバーナビのユーザーが平均的に分布すると言うことはあり得ませんから、人口の多い大都市圏とその周辺地域の情報から精度が向上していくと思います。
――ブレインユニットから送受信されるのはどのような情報なのでしょう。そして、利用することで具体的にはどのようなメリットが得られるのでしょうか
矢野氏: ブレインユニットからアップロードされるのは、ある地点からある地点まで走行したという走行履歴である実走データ、駐車場の入り口位置データ、利用者がそれぞれ設定した目的地のデータです。ダウンロードされるのは、渋滞予測データ、駐車場の入り口位置データ、各種の施設情報です。
各データのサイズはまちまちですが、最も大きいのは実走データです。小さく見積もってもメガバイトクラスのデータをやりとりすることになります。ここでもブロードバンド回線を利用するというリビングキットのメリットが活用できます。
いままでのカーナビでも、渋滞についてはVICSで受信したデータと、あらかじめHDDに蓄積した「渋滞しそうな道路の情報」を総合した渋滞回避予測が可能でしたが、そのHDDの情報もVICSのデータが基本になっています。新しいサイバーナビは実際に利用者が走行したデータをユーザーから受け取りますから、VICSのビーコンが設置されていないルートについても高精度な予測が行えます。また、天気予報の情報も加味することで、精度を上げる工夫もしています。
駐車場の入り口情報も便利に使ってもらえると思います。これまでのカーナビでも駐車場の場所は分かりますが、入り口は分かりません。入り口情報を利用すれば、車を止めたい駐車場の入り口まで正確に案内してくれます。一方通行の多い場所などでは威力を発揮するはずです。
データの受信は6月上旬から開始する予定で、ユーザーへのフィードバックは年1回を予定しているバージョンアップか、Webでの情報提供という形で行うつもりです。データをどれだけ収集できるかがサービスのポイントになりますから、利用者の方には月1回ほどブレインユニットをインターネット回線に接続してもらえればと考えていますが……。将来的な構想ですが、データが十分に集まれば、月1回程度の情報提供も行えればと考えています。
――スマートループの実装以外にも、ナビゲーションに関する機能は強化されているのでしょうか。カーナビの市場は安定・縮小傾向にあると言われることもありますが、「カロッツェリア」は今後どのようなカラーを打ち出していくのでしょう
矢野氏: ナビ自体のルート検索エンジンも進化しています。平日/休日の概念を取り入れることで精度を上げたほか、「以前、どのルートを利用したか」をHDDに記録していき、次回のルート設定に役立てるようにしています。走った際の時刻/天気/渋滞状況は記録していませんが、これらについてはバージョンアップなどでカバーしていくつもりです。
今後の方向性ですが、まずは今年掲げた「外部情報の活用」をさらに発展させていくつもりです。その上で、AV関連機能の充実も進めていきます。パイオニアといえばAV機器メーカーですから、プラズマテレビやレコーダー、オーディオ機器などホームエンターテイメントとのつながりを感じさせる機能やデザインも取り込んでいけたらと思います。
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