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コラム
» 2006年06月19日 13時00分 公開

小寺信良:〜来なかった未来〜 PDAはなぜ衰退したか (2/3)

[小寺信良,ITmedia]

 PDAとハンドヘルドPCの差というのは、客観的に見ればキーボードのアリ/ナシである。まあ使っていた本人にはこだわりがあり、そうバッサリ言い切ってしまうことに反論もあるだろうが、筆者はそう思う。

 持ち出した情報を参照する、そして行動する、という使い方がメインの人は、なるべく小型で情報の見通しがいいものが向いている。PDAとはまさに、そこを目指したものであった。

 一方ハンドヘルドPCでなければダメだという人は、現場で大量の情報を入力する必要があった人ではなかったか。もちろんPDAでも、手書き入力による文字入力は可能だったし、外部キーボードを接続できるものもあった。だが、キーボード有りがデフォルトのものを選択するというスレッショルドは、やはり現場での入力量の違いだったのだろう。

 そしてこれらのものがなぜ廃れてしまったかと言えば、PCが十分に小型になり、バッテリーの持ち時間も飛躍的に延びたから、というのは一つの要因であることは間違いない。だが潜在的な原因は、PDAやハンドヘルドPCの、スタンドアロン性だったのではないか。つまり入力した情報をその場で送る、あるいは刻々と更新される情報を逐一アップデートする、そいうニーズに対して、付いていけなくなってしまったからではないかと思う。

 現在PCに装備されている、あるいは装備可能な通信手段は、格段に多い。モデム、有線LAN、無線LAN、スロットインの電話系通信カード、Bluetoothによる携帯電話との接続、そしてUSBで大抵の電話機とつなぐことができる。ユーザーは、どれでも自分にとってメリットのある通信手段を選べるわけだ。これの意味するところは、いかに現代の情報がネットワークなしに成立し得ないか、ということである。

 そしてさらに衰退を加速させた原因として、携帯電話がPDA機能を盛り込んでいったというところも大きい。もちろん元々通信機であるから、メールの送受信は早くから実現していたが、アラーム機能から始まってスケジュール管理機能も、本体に内蔵するようになった。音声メモが録れて、写真も撮れて、それをメールで母艦PCに送ることができる。予測変換機能の発達により、10キーでも効率よく文字入力ができるようになった。

 本来PDAやハンドヘルドPCが進むはずだった道を、圧倒的な資本力と開発力によって、先に携帯電話に取られてしまった。

世代で変わる文字入力

 しかし、文章の入力にはキーボードのほうが便利だという人は、やはりいることはいる。先にPCで文字入力を覚えてしまった人には、親指だけで入力するよりも、指10本使って入力したほうが速いと思っているわけである。

 米国ではもともとキーボードに対する慣れというのは大きく、そこが日米の携帯電話機能の進化を分けていたような気がする。だが「BlackBerry」の登場により、ある意味ハンドヘルドPC的なアプローチが携帯電話の世界に持ち込まれることになった。

 最初は法人向けのサービスからスタートし、のちにコンシューマ製品となったBlackBerryは、ラスベガスなどのコンベンションセンターのプレスルームで使っている人を見かけることはしばしばあった。昼食時ともなれば、米国人が集まって最新BlackBerry自慢合戦に遭遇することも珍しくない。だがある意味そこは特殊な状況でもあり、今ひとつ本当に流行っているのか疑問ではあった。

 だがその後、サンフランシスコのモノレールに乗ったときに、まったく普通のおばちゃん2人がBlackBerryでメールを入力しているのを見て、本気で定着しているのかと思った次第である。

 日本でもW-ZERO3など、電話とキーボードを合体させた作りの電話機がある。もちろんシャープが以前からZaurusでキーボード付きの端末を発売し続けていることもあり、キーボード入力の必要性を一番わかっているという背景もあるだろう。

 筆者もW-ZERO3を使っているが、確かにキーボードに慣れている人間にとっては、10キーをポツポツ押すよりも速い。だがある程度長文の入力となると、やはり指10本使って入力できるわけでもなく、逆に思い通りのスピードで書けない中途半端感にストレスが溜まる。先日も携帯電話を使って書いたという高校生の作品が青春文学大賞を受賞したばかりだが、こういうニュースを聞くと、世代の違いを思い知らされる。

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