フォステクスから発売された“eA”(エア)「GY-1」は、音声信号に合わせて発生させた振動を設置面に伝え、本体が載っている机や家具をから音を出すという珍しいスピーカーだ。開発を担当したフォスター電機の三浦昭人氏と小野原博文氏、販売を担当するフォステクスの佐藤晴重氏に、詳しい仕組みと、製品を開発した経緯を聞いた。
――今回発売された「GY-1」ですが、どういった仕組みで音が出ているのでしょうか。
小野原氏: 本体内にある超磁歪素子という物質が音声信号に合わせて振動するのですが、これが底面から設置面に伝わり、周囲の空気を振動させて音を出しています。「GY-1」を浮かせると分かりますが、製品自体から出る音はわずかです。机など家具のに載せることで、より大きなスピーカーになるわけです。
三浦氏: GY-1を置く場所ですが、木製の机や床などがいいですね。コンクリートや金属面などには向きません。オルゴールやバイオリン、ギターなどをイメージしていただくと分かりやすいのですが、サウンドボックスや弦で発生した振動を木製の「箱」で反響させ、音色を整え、音を大きくしています。GY-1も同様で、木製の家具の上が一番マッチします。
――超磁歪素子とは、どんな素材ですか。
小野原氏: 超磁歪素子とは、外部からの磁界によってその寸法を変える素材です。GY-1には長さ28ミリの棒状のものを2本使っていて、入力された音声信号により縦方向に0.1%の寸法の変化を起こします。変化が起きる量はわずかですが、生じる応力が非常に大きいので、会議用の机なども振動させることができます。
三浦氏: 音源には基本的に2つの種類があります。点音源と面音源です。通常のスピーカーというのは点音源で、振動版で発生させた波形を広げ、遠くへ音を伝えます。ただ、音源から離れれば離れるほど、半球状に波形が広がっていきますから減衰してしまいます。
面音源というのは理論的にしかありえないのですが、無限に大きい音源があれば、波形は広がらずに音源から水平に伝わっていきます。距離が離れても点音源よりも減衰しにくくなるんです。GY-1を使うと、机の天板や床一面から音を発生させられますので、面音源に近い状態を作りだすことができます。
開発中のことですが、離れた場所でGY-1のテストを行っている音が聴こえて来たんですね。この距離でこの音量なら、かなり大きな音で鳴っているんだろうと近づいてみたら、あまり音の大きさが変わらなかったんですよ。音源の位置に関わらず、どこでも同じ大きさの音が聴こえるという、これまでに無い体験をしました。
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