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映像配信における缶ジュースビジネス小寺信良(2/3 ページ)

» 2006年07月18日 10時20分 公開
[小寺信良,ITmedia]

水筒か、缶ジュースか

 iPodの映像ソリューションと、これらPMPの違いは何か。筆者はそこに、缶ジュースビジネスとの共通項を見いだすことができるのではないかと思っている。

 缶ジュース、まあ最近はペットボトルのほうが増えてきてはいるのだが、今我々は大抵の場所に行って、飲み物に不自由することはない。喫茶店などに入るまでもなく、駅や通りをちょっと見渡せば大抵どこかに自動販売機があり、120円から150円ぐらい出せば飲み物が買える。

 それ以前はどうだったかと言うと、サラリーマンは皆弁当とお茶を入れた水筒をセットで、会社に持って行ったものである。外回りの営業の人や屋外で仕事をする職人さんなんかは、かなり大型の水筒を持っていたものだ。

 自分で録画した映像を自分でPMPに転送して持ち歩くというのは、いわゆる水筒を自分で用意している状態だと言える。それが悪いとか古くさいということではなく、自分の好きなものを好きなだけ持って行けるわけだから、ある意味非常に自由だと言えるだろう。

 一方でiTunes Music Storeで行なっているような映像配信ビジネスは、ある程度消費者の好みに合わせながらも、好みに近いものの中から選択を迫る。ただ、自分でそれを前もって準備する必要がないという点で、缶ジュースビジネスに近い。

 ただ現状のiTunes Music Storeでは、少なくともiTunesが動作してネットにつながる環境が必要になる。つまりモバイルで購入することは可能だが、そのときにパソコンが必要になるという点で、まだ完全ではない。ここまでわかれば、次に来るビジネスの形も見えてくる。つまり現在の自動販売機のように、一つの消費行動としていつどこにいてもそれが手に入るという状態に持って行くことが、次のステップになるだろうと思われる。もちろん、iTunes Music Storeがそれをやりたいかは別問題で、一般論だ。

 今この課題に取り組んでいるのが、ソニーがPSP上でサービスしているPortable TVであろう。同サービスはPSPの無線LAN機能を利用して映像コンテンツをダウンロード販売するサービスである。1コンテンツの価格は105円から315円だが、無料のものもある。

 モバイルのネット接続環境としては、So-netが「公衆無線LANデイリープラン」を提供している。これは1回350円で、HotSpotまたはBBモバイルポイントに丸1日接続できるというサービスだ。月額固定ではなく、必要な時だけ払えばいい。1日350円という価格が高いか安いかという議論はあるだろう。だが電話キャリアに月額定額で2〜3千円プラスして払うことを考えれば、常時モバイルで接続する必要のないライトユーザーには、気安いサービスだ。

 これらのサービスの組み合わせで、缶ジュース並みに映像コンテンツが買えるという環境を提供している。ただ現時点では、ソニーのサービスにありがちな「世間の感覚よりも先に進みすぎている」という部分があることは否めない。だが2〜3年後を見据えた場合、このような形態のサービスはメジャーになる可能性はある。

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