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コラム
» 2006年07月18日 10時20分 公開

小寺信良:映像配信における缶ジュースビジネス (1/3)

iPodでの映像コンテンツは、音楽を買う感覚と同じだから意味がある。iPodの映像ソリューションとPMP(Portable Media Player)の違いには、“缶ジュースビジネス”との共通項を見いだすことができるのではないか。

[小寺信良,ITmedia]

 先週来日したAppleのiPodプロダクト・マーケティングディレクター氏のインタビューによれば、iPodの動画再生はあくまでもオプションであり、ベースは音楽プレーヤーであることが改めて確認された。現状のiPod以上に動画再生を強化したモデルの登場は幾度となく噂を呼んでいるが、音楽再生機能およびiTunes Music Storeの楽曲販売ビジネス中心であることは、iPodの基本として今後も変わることがないということだろう。

 もっともAppleの場合、そのあたりの方針は大将の一存でひっくり返ったりもする、というかその世の中をひっくり返す発表は自分でしないと気が済まない人なので、ディレクター氏も知ってて喋れない部分はいくつもあるだろう。

 iTunes Music Storeの音楽的な功績は、多くの人に語られている。一方映像的な功績はといえば、これまで消費者に対してバラで小売りすることなど考えもしなかった音楽ビデオクリップを新旧取りそろえて、商品として売って見せたというところにあると思っている。すなわち課金まで含めた流通システムを作ってしまえば、その上でデジタルデータならばなんだって商売になるということを実証して見せたということである。

 一方でiPodでは、自分で録画した番組もフォーマット変換することで視聴できる。だがそれを日常的に実践している人は少ない。そこまでテレビが好きな人なら、わざわざiPodを使うのではなく、別の手段を講じるだろう。iPodでの映像コンテンツは、音楽を買う感覚と同じものであるから、意味があるとも言える。

PMPはなぜ流行らなかったか

 PMP、すなわちPortable Media Playerというのは、2003年頃から本格的に製品が出てきたと記憶している。その背景としては、前年にDivXやのようなMPEG-4系の高効率なコーデックが登場したことが挙げられる。当初はPCのプロセッサでエンコード、デコードを行なうのみだったが、Sigma Designsのようなチップメーカーがハードウェアデコードチップを開発したことから、ノンPCで再生という可能性が出てきた。

 2004年には、MicrosoftがIntelのXScaleプロセッサを採用したポータブルAVプレーヤー用のプラットフォームとして、「Windows Mobile based Portable Media Centers」(以下Windows PMC)を立ち上げた。ハードウェアをIntelが、ソフトウェアをMicrosoftが提供することで、よりPMPの開発を加速させようという狙いだった。

 それほど当時のPMPは、期待の新星だったわけである。だが実際にフタを開けてみれば、Windows PMCではWMVしか再生できないといった、まあありがちと言えばありがちな縛りがあった。すでにDivXなどを使っていたユーザー、また変換なしにMPEG-2のままで再生したいと思っていたライトユーザーにそっぽを向かれる結果となったのは、言うまでもない。

 また日本ではWindows Media Center Editionが不発だったこともあって、是が非でもWindowsとPMPが堅く連携していなければならないということでもなかった。またこの時点でPMPに期待していたユーザーは、ほとんどPC上級者であり、圧縮や転送が簡単であることは、必ずしもセールスポイントに結びつかなかったと見ている。つまり、右から左に映像を転送して見られればいいという感覚になるまでにはあと数年が必要であり、この時点でのユーザーは、自分で好きなようにいろいろ勝手にやらせてくれるオープンな仕様を好んだのである。

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