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磁力でCCDを動かす手ブレ補正――「K100D」の開発者に聞く永山昌克インタビュー連載(2/4 ページ)

» 2006年07月18日 14時21分 公開
[永山昌克,ITmedia]

どうして610万画素CCDなのか

――他社ではより高画素の製品も増えていますが、K100Dが有効610万画素CCDを搭載した理由は?

畳家氏: 製品の仕様決定は、どんなユーザーに向けて、どれくらいの価格で提供できるかが大切なポイントです。K100Dのターゲットを具体的に言いますと、メインの想定ユーザーは30代から40代の子どもを持つ男性です。結婚や出産をきっかけにしてデジカメやビデオを購入する人は多いでしょう。子どもがまだ幼く、自分の目の届く範囲で動き回っているうちは、光学3倍ズームのコンパクトデジカメでも対応できます。

 しかし、幼稚園や小学校に入るころになると、運動会や入学式など決められたシーンで撮ることが徐々に多くなります。私自身がそうですが、親ばかは我が子の姿を大きくアップでとらえ、できるだけきれいに撮りたいと思うものです。少し成長した子どもを、様々なシーンで撮りたい、そう思ったときに初めてコンパクトデジカメの機能や画質に不満が生じるのではないでしょうか。そして、より画質が美しく、レンズ交換ができるデジタル一眼レフ機の購入動機につながります。

 では、そうしたユーザーは実際にどんな使い方をするでしょうか。最終的に印刷して楽しむなら、家庭ではインクジェットプリンタでA4サイズに出力し、お店に出すならL判か2L判で印刷するのが一般的です。部分をトリミングしたり、画像を補正したりする使い方は、これらのユーザー層ではほとんどありません。A4印刷の場合、K100Dの610万画素CCDで十分なクオリティを出せます。

 単に数字的なアピールを狙うなら、1000万画素などの高画素CCDを載せる選択はありました。しかしK100Dでは、実際の使い方を想定した上で、あえてハイスペックを追っていません。この610万画素CCDは、これまでの製品にも採用したものです。デバイスとしての価格がこなれているだけでなく、製品全体の開発や生産の際にこれまでに築いた技術をある程度生かすことができます。ユーザーを見据えたバランスのいい商品を、求めやすい価格で提供したいという判断で610万画素CCDを選択しました。

photo 内部には、強度の高いステンレス製のフレームを採用。その中に各部材を効率的に配置する

――画質の傾向はこれまでと同じですか?

畳家氏: CCDや画像処理のASICそのものは、従来の「*ist D」シリーズから大きく変更していません。しかし、画像処理のチューニングをブラッシュアップしました。特に変わったのは、初期設定の画像仕上げ「鮮やかモード」の絵作りです。

 そもそも鮮やかモードは、ビビッドでで見栄えのする画質を意図しています。従来のフィルムの場合、ミニラボで同時プリントを行うと、そこで得られる写真は非常に鮮やかな仕上がりになります。そんな同時プリントのような仕上がりを目指し、これまではカメラの内部処理で彩度を高め、飽和ぎりぎりまで鮮やかにしていました。

 しかし、最近ではプリンタの進化が目覚しく、プリンタドライバの機能によって、見栄え重視の出力ができるようになっています。そうした周辺インフラの変化を踏まえ、K100Dの鮮やかモードでは、従来よりも彩度強調を抑え、階調をある程度残すようにしています。

――鮮やかモードの彩度や階調以外でも、画質が変わった印象を受けますが。

畳家氏: はい。全体的な画質もレベルアップしています。またオートホワイトバランスのヒット率を高めたり、ISO3200など高感度時の画質再現性なども進化させました。

 一般的に画質というと、より高画素のCCDを使ったり、新しい処理回路を搭載した場合に向上すると考えられる傾向があります。メーカー側としても、そのほうがアピールするのが簡単です。しかし実は、ソフトウェアのチューニングのレベルで、画質をまだまだ追い込むことは可能です。レスポンス面はハードウェアに依存する部分が大きいですが、RAWからどんなJPEGを出すかについては、ソフトのチューニングが大きなウェイトを占めます。

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