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名機の血統、デノン「SC-CX101」短期連載:小さな本格派スピーカーを探す(2/2 ページ)

» 2006年07月20日 15時22分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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リビング:豊かな音場と耳当たりの良さ

 近年、薄型テレビの普及でリビングのテレビは大型化が進んでいるが、ハイビジョンによる画質の向上や画面の大サイズ化に見合うだけの音質が達成しているかといえば、実は以前よりも音質は低下傾向にある。

 なぜなら薄型化によりスピーカーに割ける奥行きが減り、さらにデザイン上の要求から見た目にスピーカーがハッキリとわかるような配置ができなくなってきているからだ。画質は明らかに向上し、大画面になっているのに、それと組み合わせる音はチープになっている。

 リビングで薄型テレビのサイドにスピーカー追加を提案したいのは、その画質、画面サイズに見合うだけのスケール感と質を持った音で良いコンテンツを楽しんで欲しいからだ。

 さて本機の音だが、サイズから想像するよりも低域の量感があり、また音場全体のボリューム感を大きく感じる。小型機のため低域の質や解像度は求められないが、ポピュラーやロックのベースライン程度ならばバランス良く聴かせる能力がある。そこには大味なAV向けデノンスピーカーの面影はない。

 全体的にはやや中域が張り出し、高域の透明感に少しばかり透明感が不足する傾向はあるが、重心が低く、安定感のある音の作りは耳当たりの良いツィーターの特性もあって“心地よさ”というメリットの方が上回る印象だ。長く聴いていても飽きず、疲れにくい。

 一方で小型スピーカーらしい解像度の高さはない。一つ一つの音がキレイに分離し、楽器の輪郭が見えてきそうなカリカリの解像感を期待するならば、ほかのスピーカーを選ぶ方がいいだろう。SC-CX101の良さは、小型ながらもゆったりと、しかししっかりと音楽的表現が行える空間表現力にある。解像感は程々とはいえ、音の立ち上がりそのものは速く位相もそろい、気持ちよくリズムセクションが聞こえる。

 Donald Fagenは、そのキレの良さよりも、大人っぽさを強く感じ、BGMライクに鳴る印象。Joe SampleのPeecan Treeでは、ピアノの筐体がきちんと“鳴っている”ことが感じられる。高域の伸びにはやはり不満は感じるが、ピアノの落ち着きは他の小型製品には見られないものだ。

 他小型機ではカラッとクールに聞こえるMatt BiancoのBasiaによる歌声も、ジャズクラブで歌っているかのように大人っぽい雰囲気に包まれる。場に漂う音の密度がたいへん濃い。といっても箱鳴りやポートからの音が余分な音を足している風ではなく、S/N感は良い。

 テレビやDVDの音にスケール感が加わるだけでなく、音楽用として大変に優秀といえる。BGM的に常に音楽を鳴らしておきたいというユーザーにも向いている。

デスクトップ:やや自己主張を強く感じるが高い質感

 近接での試聴では、AACやMP3といった圧縮音源再生での良さを最初に強く感じた。こうした圧縮音源にある独特の高域にある歪み感がやや緩和され、耳当たりが良く聞こえるためだ。

 近接での利用で気になりやすいツィーターのクセがないため、リビングでの利用と同様にBGMを流すために使うにはうってつけの音質だ。しかし、音場がスピーカーの奥ではなく、手前に張り出して広がる印象を強く持った。近接時には、この傾向がより強調されて感じられる。スピーカー自身の自己主張、存在感が強く感じるのである。奥まった音場の展開を好むならばセッティングなどで工夫が必要になろう。

小型スピーカーながらゆったりとした鳴りが魅力

 ゆったりとした空間表現は、10〜12センチ程度のウーファーを搭載する小型スピーカーの中では異色ともいえる味付けだ。シャキシャキと弾むような元気の良さと、切れるようにシャープな音像を求めるならば、他の選択肢を選ぶのがいい。しかし、ボリューム感と密度感を兼ね備えた音場の中で、心地よく音楽に浸りたいならばSC-CX101は7万円以上という実売価格に見合う価値のある製品だ。

 もっとも”ゆったり”とはいえ、リビングでの評価でも述べたように、決してレスポンスの悪いスピーカーではない。アタックの強い音に対するレスポンスは十分に速く、リズミカルな曲にも追従する。明るくスカッとした、ではないが、暗く湿った音ではない。

 またツィーターの耳当たりの良さも、このスピーカーを評価する上でのポイントだろう。ワイドレンジな印象はないものの、本機の上品さを語る上でツィーターのデキの良さを忘れてはいけない。

 そんなSC-CX101だが、注意した方が良いポイントがひとつある。それはセッティングに対する敏感さだ。インシュレータに対しても敏感だが、何より配置が重要。リアバスレフ方式はポートからの音が音質を汚さないものの、背面の壁からの距離には敏感。壁からの距離が近すぎると低域が膨らみすぎる傾向がある。できれば1メートル、最低でも60センチぐらいは壁から離して配置したい。

 とはいえ、薄型テレビとの組み合わせやデスクトップ上では、なかなか壁から離しにくい場合もある。しかし本機にはポート機能の調整用にスポンジが付属しており、これを取り付けることで、バスレフポートの働きを調節することが可能だ。壁に近い位置置く場合は、このスポンジを利用して音域バランスの改善にトライしてみるといい。

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