ただEPNも、この方式に変更するということが消費者にとってどの程度の負担になるのか、今のところ具体的な資料がないため予断を許さない状況だ。JEITAとしては、EPNは現在の運用規定の中ですでに盛り込まれている技術であり、移行は難しくないと主張する。
ARIBで規定された運用規定によれば、デジタル放送のコピー制御情報は、copy_control_typeというフラグ内で規定されている。copy_control_type内には、デジタルコピー制御記述子(digital_recording_control_data)と、コンテント利用記述子(encryption_mode)の2つがある。
デジタルコピー制御記述子の種類 | |
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デジタルコピー制御情報 | 制約条件なしにコピー可/1世代のみコピー可/コピー禁止 |
アナログコピー制御情報 | 制約条件なしにコピー可/コピー禁止 |
コンテント利用記述子の種類 | |
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一時蓄積制御ビット | コピー禁止コンテンツであっても、タイムシフトのために一時蓄積を許す |
一時蓄積許容時間 | 一時蓄積を許す時間。現在は90分に固定 |
出力保護ビット | デジタル出力を権利保護処理して出力する |
現在のデジタル放送では、デジタルコピー制御記述子(digital_recording_control_data)はデジタルコピー制御は「1世代のみコピー可」、アナログコピー制御は「コピー禁止」にフラグが立っている。一方コンテント利用記述子(encryption_mode)の出力保護ビットは利用されておらず、無効となっている。
EPN方式ではこれらのフラグを、デジタルコピー制御記述子(digital_recording_control_data)は「制約条件なしにコピー可」に変更する。アナログコピー制御に関しては、現時点ではどうするか明確にはなっていないようだ。そしてコンテント利用記述子(encryption_mode)のほうは、出力保護ビットのフラグを立てる。
両方とも規定はされているが、それが変更される可能性まで視野に入れて設計していたかは、各メーカーの判断による。なにせARIB TR-B14,15は、ARIBが正規に策定した規格ではなく、ただの技術資料なのである。したがってファームウェアのアップデートなどで問題なく対応できるかは、各メーカーの検証待ちとなるだろう。
これまでもデジタル放送のコンテンツを直接見ることができなかったデバイスに関しては、ファームウェアのアップデートなどでは対応できず、ハードウェアの買い換えなどが必要になる。DVDプレーヤーなども、EPN記録されたメディアは再生できなくなる可能性は高い。またパソコンはソフトウェアの対応で可能なのかは、今後の展開次第のところがある。
これまで消費者と家電メーカーは利害関係が一致していたために、コピーワンスの撤廃に関しては共闘の姿勢を取ることができた。だがEPN方式で消費者の負担増、例えば今までのデジタル放送対応テレビとかレコーダとか全部使えませんから買い直してくださいみたいなことになると、話は違ってくる。安いものならいい、ということでもないだろう。問題は利便性なのである。
元を正せばなんで世界でどこの国もやってないコピーワンスなんか始めちゃったのか、というところに戻ってしまうのだが、いつまでもそれを言っても仕方がない。コピーワンス導入は、あきらかに負のスパイラルを生む失策だった。むしろコンテンツがたくさん利用されればみんなハッピーなんですよ、というポジティブな図式をイメージできなければ、同じ事の繰り返しになってしまう。
EPN方式も、コピーワンスより消費者にとってメリットがある選択なのか、しっかり見ていかなければならない。
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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