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れこめんどDVD:「オリバー・ツイスト(HD DVD)」DVDレビュー(2/3 ページ)

» 2006年09月25日 14時24分 公開
[飯塚克味,ITmedia]

オープニングからクオリティの高さを実感

 今年1月に劇場公開された「オリバー・ツイスト」は通常版と2枚組の2種類のDVDが6月30日に、待望のHD DVDは8月25日に発売された。今回はAVファンなら見逃せないHD DVDで視聴してみた。視聴は液晶プロジェクターによるスクリーン再生(80インチ)とプラズマテレビ(42インチ)で行った。接続はいずれもHDMIだ。

 まずオープニングだが、タイトルベースになっている絵画の表現力からしてDVDとの違いに驚かされる。細かな描線はSDの画質ではほとんど表現が不可能で、HDの情報量の多さが冒頭から実感できる。本編には、絵画がそのまま実写にオーバーラップして入っていくのだが、その効果も極めて自然だ。

 CH-2では役人らしき男に連れられて歩くオリバーがさびれた風景の中を歩く場面が続くが、薄暗いトーンながらその表現力はDVDとHD DVDとでは格段の差が付いている。また救貧院に到着して自己紹介をする時にオリバーが流す涙もDVDではぼんやりしか見えないのに、HD DVDでははっきり感じ取るレベルに表現されていた。オリバーはその後、仕事をさせられるようになるが、大量の子供たちが紐をほぐす作業場では個々の帽子の色味に違いがあり、ほとんどモノトーンながら実に立体的な映像を構築しているのが分かるだろう。

 CH-3でオリバーは貧乏くじを引いてしまい、食事の時におかわりを要求するハメになってしまうのだが、食堂の壁に描かれた「GOD IS HOLY, GOD IS TRUTH」(神は神聖なり、神は真実なり)の文字も際立った。こうした表面上の言葉は、次の職員たちの豪勢な食事場面で大いに皮肉として機能している。この件で職員たちに目をつけられたオリバーは5ポンドで引き取り手を探されることになるのだが、張り紙が貼られたレンガ作りの壁にも圧倒された。まるでレンガがひとつずつ数えられそうなそのカットは絵画的な美しさに満ちている。これからオリバーが金目当ての煙突職人に引き取られそうになるのに、レンガに目がいってしまうのも困ったものだ。

 その他には煙突職人の引いているリヤカーの中身もよく見えて興味深かった。映画とは直接関係ないが、先日放映された「タモリ倶楽部」で実際の煙突職人の仕事ぶりを見たばかりだったので、つい画面を止めて「これは何に使うものだろう?」とか考えてしまった。裁判所の計らいで結局、棺おけ屋に奉公に出ることになったオリバー。

 CH-5では夕闇の中、そこにたどり着くまでが描かれるが、冒頭と同様、薄暗い中なのに、映像はやたらと立体的に見えるのが素晴らしい。

小道具も鮮明に。美術スタッフ、いい仕事してますね

 CH-6では棺おけ屋で働くオリバーの姿が描かれるが、家の中にある井戸、かまど、まな板、カップまでが強烈な存在感を放っている。ここまでしっかり見せられると、苦労した美術スタッフの仕事も報われることだろう。

 オリバーはここで家の息子に母親の存在をなじられたことでケンカをしてしまうのだが、引いたカットでもお互いの瞳が輝いているのが分かるはずだ。HD DVDの映像を見始めた当初は瞳の輝きに目を奪われていたが、最近はそこから照明の位置などが何となくではあるが、感じられるようになってしまい、これからは瞳に映る光源の位置までも気になってしまうのかと、HD DVDの高画質を若干恨めしく感じてしまった。

 CH-7は美しいカットが続く。奉公先から脱走したオリバーはロンドンへと向かうのだが、途中の田園風景の何ときらびやかなこと!草の匂いまで漂ってきそうなHD DVDの高画質を見てしまうと、DVDにはもう戻れないことを痛感する。

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