付属CDから専用アプリケーションをインストールすると、まずLogitechのサーバにアクセスするためのアカウントを作成する。それが済んだら、いよいよ機器登録だ。「HM-882」では最大15種類の機器を登録可能。機器登録の作業は、AV機器の型番を入力し、それを元にデータベース検索をするという手順で行う。当該機種がデータベースに見つからなかった場合、Harmony Remote Softwareは、近いと思われる製品を提示してくる。AV機器のリモコン信号というのは、各メーカーが製品ジャンルごとに数パターンを使い回しているケースが多く、近いと思われる機種を設定してもけっこう動作するものだ。
機器を登録すると、そのデバイスで使える標準的なアクティビティを表示してくれる。たとえばTVとDVDレコーダーを登録すると「DVDをみる」アクティビティを作ることができる。ほとんどの作業は質問に答えていくだけのウィザード形式のため、パソコンやAV機器に詳しくない人でも問題はないだろう。もちろん完全オリジナルのアクティビティも作成可能だ。
ネットワーク連携の要は、やはりリモコン信号のデータベースだろう。トロントにあるLogitechのDBには、AV機器はもちろん、パソコンやホームオートメーション機器まで、世界中の約4000メーカー/17万5000機種(8月末現在)ものデータが蓄積されており、毎日のように増え続けているという。Harmonyを購入したユーザーが新しい型番を登録し、それが動作して「問題なし」と答えると、それがDBに反映されるからだ。ただし、そのまま登録されるわけではなく、Logitech社内の専門のチームがデータを精査してDB登録の可否を決定するという。このあたりの手間のかけ方が、北米市場で人気を得た秘密だと思う。
とはいえ、日本市場では過去の蓄積がないためか、ちょっと不利だ。自宅にある機器を登録していて気が付いたのは、比較的最近の機種はかなり網羅されているが、古い機種は見つからないことが多いという点。たとえば、1990年代前半に製造されたソニー製のテレビや東芝製ビデオデッキ、ヤマハのAVアンプなどは、いずれもぴったり合う型番がなく、近い製品を勧められた。結果的には基本動作に問題はないのだが、勧められた型番を選ぶと、ないはずのEPGボタンが並んでいたりする。
逆に「これはないだろう」と考えていた松下電器のデジタルCATV STB「TZ-DCH2000」があっさり見つかったりもした。比較的最近の機種(わが家的に)である東芝のDVDレコーダー「RD-X4」もOK。ほかのHarmonyユーザーに話を聞いても、新しい機種についてはほとんど問題なかったというから、どうやら日本市場に関しては最近のモデルから対応が進んでいる様子だ。
一方、型番は適合したのに「使えない」データもあった。たとえばアップル「MacBook」は、検索で見つかったものの、内容をみると明らかにFrontRowリモコンのデータではない。GUIも起動できず、方向キーも使えないから、結局は1から登録することに。ちょっと首を傾げてしまうところだ。
なお、同じ製品であっても、国内向けと北米向けでは型番が異なることがあることも憶えておきたい。たとえばソニーのVAIO「PCV-RX55」を検索したところ、合うものは見つからず、類似機種として「PCV-RX55×」という3桁型番の機種が並んだ。「そういえば、ソニーは北米市場で同じ製品を550シリーズとして販売してたっけ……」などと懐かしい記憶も蘇りつつ、設定作業を進めた次第だ。DBサーバがトロントにあることを実感した瞬間である。
ほかにもビデオデッキやテレビなどはチューナーの仕様が異なれば型番が変わるため、海外のデータと照合すると合わないのは仕方ない部分ともいえる。このあたりは、日本のユーザーが増えて状況が変わってくるのを待つしかないだろう。
さて、正しいリモコン信号を見つけた場合でも、やはり微調整は必要だ。たとえば、パイオニアのDVDレコーダー「DVR-720H」では、「DiscNavi」(録画番組一覧)やHDDとDVDを切り替える信号など、使用頻度の高いボタンがしっかり登録されていたのは良いが、ボタンを割り当てている場所がイマイチ……。多機能なAV機器では、リモコン信号も多いため、1ページ(8項目)では足りず、数ページを使う。しかし使用頻度の高いボタンが前のほうにあるとは限らず、今回も液晶画面を数ページめくらないと辿り着けない場所に設定されていた。
ボタン配置や足りないボタンの追加もソフトウェア上で行えるため問題はないが、どんなにインテリジェントな学習リモコンでも、便利に使うには自分好みのカスタマイズは必須らしい。
これまでに学習リモコンを多くみてきたが、「アクティビティ」のようなアプローチは新鮮だ。パソコンによる設定が必須になるため、すべての人にお勧めできるとは思わないが、ネットワーク連携のメリットは十分に感じられ、使い勝手もいい。
Harmonyの最大のネックは、やはり価格だろう。インテリジェントな機能を持つとはいえ、学習リモコンに3万円を出そうという人は多くないから、やはりマニア向けの価格設定といえる。ただ、そうなると下位モデルの「HM-522」が魅力的に見えてくる。液晶がモノクロで、電源が乾電池(単四形×4本)という違いはあるが、ネットワーク連携やアクティビティといった特徴はそのまま(登録できる数は違う)。価格はHM-882の半分(1万4800円)だ。Harmonyの使い勝手を試してみたい人、AV機器の操作に手間をかけたくないという人には注目してほしい製品だ。
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