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ノイズキャンセリングで武装した高音質ウォークマン――「NW-S703F」レビュー(3/3 ページ)

» 2006年10月13日 00時50分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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ノイズキャンセリングの効果は

 本製品で最も特徴的な機能がノイズキャンセリング(NC)だ。仕組みとしては一般的な逆位相タイプで、ヘッドフォンに内蔵されたマイクで周囲の騒音を集め、その音に相反する波形(逆相位波形)を生成して、ヘッドフォンから出力することで外部からのノイズを低減する。

 NCは常時オンになっているのではなく、5極の対応ヘッドフォン(現時点では付属のMDR-NC022のみ)をセットした状態でメニューからNC機能をオンにする必要があり、楽曲の再生中のみ機能が有効になる。

photo ノイズキャンセルを利用するには付属品のような対応5極ヘッドフォンが必要

 ポータブルオーディオプレーヤーへの搭載という点では、パナソニックの「SV-SD800N」(レビュー)に先を越されてしまったが、本製品ではNC回路を本体に内蔵することで日常での使い勝手を向上させている。

 同社はインナーイヤーヘッドフォン+NCユニットの「MDR-NC11」で、「周囲の騒音を1/3に低減」とうたっていたが、本製品では回路を全面的に見直し既存モデルよりも広いレンジの音に対してキャンセル効果を適用させ、結果としてその効果を「1/4に低減」まで高めたという。

 実際にNCをオンにしたまま地下鉄に乗車してみたが、確かにその効果は感じられた。「ゴーッ」という走行音やガタンゴトンとゆれる車輪の音、ホームへ入る際の「ゴゥッ」という空気音まで、普段車内で聞き取れる低い騒音がかなりカットされているのが分かった。

 スイッチを入れた瞬間に一瞬音がとぎれ、ダイナミックレンジが狭くなるような感覚を覚えるが、騒音をカットされるメリットの方が大きいといえる。直接の比較できなかったが、利用した印象の限りではパナソニックの「SV-SD800N」よりキャンセル能力は高く、ボーズの「Quiet Comfort3」よりは低いように感じた。

 ただ、NCのオン/オフはメインメニューからアクセスするほかなく、素早く切り替えることは不可能だ。電車内では車内アナウンスを聞き取るなど、瞬間的に効果をオフにしたいシーンも想定できるだけに、物理的なスイッチ(ホールドスイッチの隣とかに)を設けて欲しかった。

photo 背面。ホールドスイッチと再生モード/音質切り替えスイッチが並ぶが、ここにNCのオン/オフスイッチがあっても良かったのでは

 なお、本製品ではマイクのゲインを上下させることでNCの効果を高める「Noise Canceling Control」機能も備えている。ただ、ゲインをあげすぎると周囲の音(ノイズ)を拾いすぎてしまい、逆にキャンセル効果が低下してしまう。基本的には標準設定のままで構わないだろう。

ノイズキャンセリングに注目しがちだが、その真価は「音質」

 パナソニックがポータブルオーディオプレーヤーという製品ジャンルに(おそらく)初めてNCを搭載し、ソニーも新製品で追随してきた。同社は「MDR-NC10」をはじめこれまでにも多くのNCヘッドフォンをリリースしており、そこで培われたノウハウが新製品に投入されていることは疑いようなく、事実、その効果も日常生活で使う上では十分すぎるほどだ。

 ボーズも「Quiet Comfort3」(レビュー)を今秋発表したことから、ポータブルAVにおけるこれからのトレンドはNCかと考えてもしまうが、筆者は本製品の本質はあくまでも「高音質なポータブルオーディオプレーヤー」であると考える。

 試用したNW-S703F(メモリ1Gバイト)の実売想定価格は1万8000円前後、2GバイトのNW-S705Fは2万3000円前後、4GバイトのNW-S706Fは2万9000円前後で競合他社製品に比べると割高ではあるが、しっかりとした作りのヘッドフォンが付属し、既存ウォークマンとは明らかに異なるクオリティのサウンドを再生してくれる。

 NCが万人に必要な機能かと問われれば答えは否だが、高音質はAV製品を利用するすべてのユーザーにとってもろ手を挙げて歓迎される要素だろう。ヘッドフォンの交換も可能だが(一般的なヘッドフォンに交換するとNCは利用できなくなる)、まずは出荷時の状態でそのサウンドを確かめてもらいたいと思う。「史上最高音質を目指した」という同社の意気込みは確かに伝わってくるはずだ。

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