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「いい音だと驚かせるだけの自信はある」――新ウォークマン&ネットジューク(前編)インタビュー(2/2 ページ)

» 2006年10月31日 11時50分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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越田氏: 新製品のNC機能も、既存のNCヘッドフォンに比べて特殊なことをしているわけではありません。ただ、ウォークマンというポータブルプレーヤーに搭載することを考えると、イヤーピースやハウジングの形状など、アナログな部分をかなり再検討する必要がありました。生産技術の面から見ても、これまでのノウハウが蓄積されたいまだからこそ実現した製品だといえますね。

photo NW-S700シリーズに付属するヘッドフォン「MDR-NC022」

伊藤氏: NC機能の向上だけを考えれば、遮音性の高いオーバーイヤー型ヘッドフォンを採用するという考え方もあります。ただ、広く一般の人に使ってもらうウォークマンに標準装備するならばヘッドフォンをインナーイヤー型にするのは欠かせないと思いました。

――新製品のNC機能が、もっとも効果的に抑制してくれるノイズ(騒音)の種類はなんでしょう?

越田氏: 飛行機や電車の乗車中に感じるノイズ、それに冷蔵庫やパソコンに搭載されているファンから発生する低音ノイズには効果が高いです。反対に、高い帯域の音が混ざる場所やシーンでは抑制がしにくいですね。

 機能の目的は「音楽を楽しむために、ノイズを消す」ことですから、絶対的な静寂をもたらすのではなく、「心理的に消えたと感じさせる」ことが大切ですが、これが難しい。ヘッドフォン自体の遮音性能も大きく影響しますから、いくらシミュレートしてみても、実際にモノを作ってみないと効き目が分かりにくいのです。

 NC機能を搭載したヘッドフォン(MDR-NC22など)を購入するユーザーはNCがどのようなものか理解して購入してくれていますが、ウォークマンに標準装備するとなると、そうした事前の理解は期待できません。

 NCそのものを知らなかったひとが新しいウォークマンを購入して、「NC機能の搭載されたウォークマンを買ってよかった」と思ってもらえないとダメなんです。

photophoto 「外装は曲線が多いので設計はかなり大変でした。開けてビックリ(笑)みたいな実装の仕方です」(越田氏)という内部構造

箱を開けただけの状態でビックリするぐらいの音

――新ウォークマンでは、NC機能のほかにも音質を高める要素としてステレオのLRを分離(セパレーション)する「Clear stereo」、ひずみのない低音ブーストを可能にした「Clear Bass」を備えています。最近では圧縮時に失われる補正する技術の実装を各社が行っていますが、そうした技術の投入は検討しなかったのですか?

伊藤氏: NC機能とClear stereo、Clear Bass、それに新開発の大口径ヘッドフォンの4要素をあわせて「ClearAudio Technology」と総称していますが、まずはClearAudio Technologyを煮詰める方向性です。

越田氏: 圧縮音源に対しての補正は当然視野に入れて研究しています。将来的には、何らかのかたちにして実装したいですね。

伊藤氏: 実は補正技術を実装する前にやれることはたくさんあると思っているんです。今回の新製品では、最も根本的な部分から着手したといえるでしょう。

――ClearAudio Technologyの1要素、付属ヘッドフォンのクオリティの高さも特徴的に思います。標準添付品でここまでのクオリティでは、コスト的に厳しいのではないでしょうか?

伊藤氏: 13.5ミリ径というドライバサイズは、春に発表した“EXモニター”「MDR-EX90SL」と同じです。MDR-EX90SLは手作業による調整が施されているので大量生産には向かないのですが、同じ“感動”を味わえるようと企画しました。

 企画の段階で、目標とする要件として「MDR-EX90SLと同レベルクオリティのヘッドフォン」「これまで以上のNC機能」「NC機能をオンにしても長時間再生」という3つを挙げたのですが、設計の方からは「それはいくらなんでもムリ」と言われてしまいました(笑)。ただ、製品として仕上がってみると3要件をバランスよく満たすことができたと自負しています。

 コストについてはよく聞かれますが(笑)、企業ポリシーということで。新ウォークマンの音質が、「ポータブルプレーヤーにおける高音質」のスタンダードになればいいと思っています。

越田氏: 普及品でどれだけいい音が出せるか、がウォークマンのテーマです。ウォークマンを名乗る以上はコストパフォーマンスだけを追求するわけにはいきません。

 これは個人的な感想なんですが、圧縮オーディオが全盛の時代になって少し音に対するプライオリティが下がっているように感じられるんです。「こんなものか」って。そこであえて、1つのパッケージ製品としていい音の製品が作りたかったんです。

 箱を開けただけの状態で、ビックリするぐらいいい音を出すという自信があります。その音を楽しんで欲しいですね。

(後編に続く)

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