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「HDDコンポ時代」の幕開けを告げる1台、ネットジューク「NAS-M90HD」レビュー(4/4 ページ)

» 2006年11月07日 11時49分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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充実の「母艦」機能

photo 「転送」ボタン

 ウォークマンをはじめとした外部機器への転送は、HDDモード(HDDジュークボックス)から行う。前面の目立つ位置に「転送」ボタンが用意されていることあり、手順自体はわかりやすいが、前述したように外部機器の種類とフォーマットには密接な関係があることに気を付けたい。最も汎用性が高いのはMP3で、リニアPCMは新型ウォークマン(NW-S600/700)にしか転送できない。

 実際の手順だが、外部機器を接続した状態で「転送」ボタンを押すと転送メニューが表示されるので、転送したい楽曲をアルバム/プレイリスト/楽曲の各単位で指定すればよい。ウォークマンを接続した場合には、最後に転送した時間よりもあとに本体HDDへ録音された楽曲(=まだ聴いていない楽曲)だけを自動的に選んで転送する差分転送機能「かんたん転送」も利用できる。

 出荷時の設定では「転送」ボタンを押すとウォークマン用の転送モード(ウォークマン以外のデバイスには転送できない)が起動するが、これは「オプション」――「設定」――「転送ボタン」から変更できる。普段利用するポータブルプレーヤーの種類に応じて設定しておくといいだろう。

photophoto ウォークマンをUSB端子に接続した状態(左)、ウォークマンへの転送画面(右)

 転送できないデバイスとフォーマットの組み合わせ(USBメモリとATRAC3など)で「転送」ボタンを押すとアラートが表示されるが、その理由は表示されないので、一瞬、なぜ転送できないのかが分からなくなることがあった。転送可能な組み合わせすべてを表示するのは液晶表示エリアの関係などで困難だとしても、曲名に「MP3」「ATRAC」などフォーマットを示すアイコンぐらいは付けて欲しかった。

photophoto 「転送」ボタンの設定画面(左)、USBメモリにATRAC3の楽曲を転送しようとするとアラートが出る(右)

 今回はウォークマン(NW-S703F)を接続し転送してみたが、その速度は非常に高速。MDから取り込んだ74分2秒(11曲/ATRAC3 132kbps)のアルバムを転送したところ、約2分20秒で転送処理は完了した。カタログでうたわれている最速50倍速(ATRAC 66kbps時)には及ばなかったものの、十分に実用的な速度だ。

photo 接続したプレーヤー/メディアのファイル管理も行える(左)

「S-Master搭載」の期待を裏切らない音質、HDDミニコンは本格普及の時代へ

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 音質面の装備も充実している。本製品は同社独自のデジタルアンプ「S-Master」を搭載し、25ミリソフトドームと130ミリアルミコーンを備えたバスレフ型スピーカーを組み合わせている。

 デジタルアンプに反応の高速なアルミコーンスピーカーを組みあわせたおかげか、そのサウンドはクリアかつ高音のヌケもよい。特に解像度の高さを感じさせるのは、デジタルアンプ搭載機ならではだろう。ギターソロやピアノ、ハイハットなどのきらびやかな響きが美しい。

 製品の企画担当者は音質の方向性について、「若年層ユーザーが好みそうな“若い音”は目指していません」とコメントしているが、低音の押し出しはややきつめ。中域の厚さ不足や、低音過剰を感じるかもしれない。

 ただ、解像感の高さは保たれているので全体のバランスは崩れていない。安価なミニコンポやラジカセとは一線を画すクオリティだ。


 ここまでに紹介した機能のほかにも、DLNAクライアント機能やメモリースティック/USBメモリを経由しての楽曲インポート機能なども備えており、その気になれば室内に存在するさまざまな音源の出口として本製品を利用できる。

 “個人が楽しむ音楽すべての母艦となる”という基本的なコンセプトこそは既存モデルを踏襲するものの、起動時間や各機能の切り替え時間は高速化が図られており、ミニコンポという「手軽なAV機器」としての使い勝手も大幅に向上している。

 「ネットワークを通じてWMAファイルの再生ができない」「蓄積した楽曲ファイルを直接PCへインポートできない」といった不満もあるが、「おまかせチャンネル」「ラジオ録音」などHDDという大容量デバイスを活用する新提案も行われており、全体的な完成度は高いといえる。

 9万円を切る程度という実売価格(ITmedia Shopping調べ)はミニコンポとしては高額な部類にはいるが、これだけの機能を備えた製品が10万円以下で買えるようになったともいえる。HDDミニコンポという製品ジャンルは依然としてニッチではあるが、本製品の完成度の高さからをみると、HDDミニコンポがもはや一部マニア層だけに向けた製品ではなく、マスを狙った製品になったことを感じさせる。一般ユーザーとっても選択肢の1つになりうる製品だ。

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