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耳の中に「ボーズ」は出現するか?――「Bose in-ear headphones」レビュー(2/2 ページ)

» 2006年11月10日 11時10分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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耳の中に「ボーズサウンド」は出現するか?

photo 装着例

 今回は第2世代iPod nano(2Gバイト)との組み合わせで視聴を行ったが、まずはその独特の装着感に驚きを隠せなかった。圧迫感はほぼ皆無。耳にふわりと乗っているような感覚で、一般的なインナーイヤー型とは一線を画する。これならば長時間の利用でも疲労感は少ないはずだ。

 その軽快さがイヤークッションの先端が耳栓型をしていないことに起因することは分かるのだが、iPodに付属するようなインイヤー型とも、押し込むカナル型とも異なるフィーリング。独特の装着感のために多少の慣れは必要かと感じるが、イヤークッションが滑り落ちてしまうことなく、フィット感も上々だ。

 ただし、あくまでも装着は「耳に乗せている」ので、電車内などで周りの人の服やバッグにヘッドホンのコードが引っかかったりしてしまうと、ヘッドフォンはズレ落ちてしまう。頭を傾げただけで落ちてしまうほどではないが、耳栓型を愛用しているユーザーからすれば、密閉感の欠如は感じるだろう。

 耳栓型ではないため、遮音性は少々乏しい。一般的な音量で利用する限りそれなりに外部音が入ってくる。ただ、その遮音性から想像するよりも音漏れは少ない。同レベルの音量で本製品とソニーのカナル型「MDR-EX85SL」を比較してみたが、シャカシャカ音は明らかに前者の方が少ない。

 音質についてひと言で言うと、「ボーズの音」。低音が非常に豊かで、中域にも暖かみのあるサウンドだ。空間を感じさせる中低域の再現性に優れており、低域のストリングスやベースラインの再現にはボーズらしさを十分に堪能できる。

 ただ、中低域の豊かさに比べると、高音のきらめきには欠ける印象。シンバルやディストーションの効いたギターの高音域についてはややくぐもったような感じに聞こえる。全域に渡って破綻なく再生するものの、低域の厚さを重視したサウンドを指向しているように感じた。オーバーイヤー型のTriPortに似た特性を持つといえるだろう。

 ヘッドフォンという製品ジャンルについては、装着感や音質について個人の好みもかなり製品の評価を左右する要素であるので、参考までにスタッフ数名にも視聴してもらった。

 カナル型を常用するユーザーからは密着感の乏しさを指摘する声もあったが、装着感についてはおおむね高評価。長時間のリスニングに向きそうという評価のほか、特に「耳でガサガサいうのがダメ」というユーザーからはこの装着感のために本製品を買ってもいいという声もあった。

 音質については評価が分かれた。「ベースのメロディがキレイに聞こえる」「低音が心地よい」と低音の豊かさを評価する声がある一方で、「中域に一枚ベールがかかったような印象」「外出時に使うならば、高音のヌケがもう少し欲しい」という意見も散見された。


 老舗のボーズが投入するということで注目度も高いと思われる本製品。まず特筆すべきはその軽快な装着感だ。長時間の利用でも使用者へ疲労感を蓄積させないないほか(筆者も2時間近く使ってみたが、それほどの疲労は感じなかった)、耳栓型の圧迫感に抵抗がある人でも違和感なく利用できる。

 中低域の空間再現性に優れるサウンドについては、ソースやユーザーの感覚によって高域の伸びやきらめきに欠けるとも感じられるだろうが、それは本製品の個性と受け止めるべき。なによりもこれだけの小型ボディでボーズらしいサウンドを再現するところを賞賛すべきだろう。

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