KDDIが12月上旬に販売開始する「W44S」は、携帯電話として初めてデジタルラジオに対応した端末だ。KDDIは2年前の2004年、既にデジタルラジオを積極的に推進していく意向を明らかにしており、そうした意味では予定通りの製品投入ともいえる。
ただ、デジタルラジオはこれまで試験放送しか行われておらず、受信機も一般向け販売が行われいなかったため、内容や視聴可能エリアについては知られていない部分が多い。W44Sの発売開始前に「デジタルラジオとはなんぞや?」を確認しておこう。
デジタルラジオとは、文字通り変調方式にデジタル変調方式を採用した放送。現在行われている放送(実用化試験放送)では、関東は東京タワーから、関西は生駒山の電波塔から周波数190.214286MHz(VHFの7チャンネル)で送信されている。
現在の出力は800ワット/240ワット(関東/関西)で、それぞれは8セグメントに分割されている。1セグメントは300kbpsの帯域を持つほか、セグメントを3つ束ねて利用する3セグメント放送も用意されており、東京では1セグメント×5と3セグメント×1の計6チャンネル、大阪では1セグメント×6の6チャンネル(本来は8セグメントだが、2006年4月から2セグメントは休止中)で放送が行われている。
なお、1つのセグメントは複数に分割することが可能で、エフエム東京は1セグメントに3つ番組を流すほか、伊藤忠商事/ニッポン放送も1つのセグメントを分化してサービスを開始する計画だ。
1セグメントあたりの帯域幅は300kbps。エフエム東京は3セグメント(900kbps)によるサービスを行うため、音声放送と同時に文字情報と静止画を送信するほか、コーデックにH.264を利用した簡易動画の放送も行う。放送波を利用したデータ配信も可能で、着うたフルやビデオクリップなどのダウンロード販売も行われる。
多機能化が進められているデジタルラジオだが、最も大きな特徴は音質の良さだ。「音質で言えばCD以上のクオリティ。1セグメントを6チャンネルに分割しても現在のFM放送なみのクオリティを保持できる」(デジタルラジオ推進協会 放送・普及広報部長 松村安紀氏)。デジタル放送なので、受信中に音がかすれる、ノイズが入るといったこともない。
良いことづくしに思えるデジタルラジオだが、当面の最も大きな問題は「視聴エリア」が決して広くはないことだ。
現状についてデジタルラジオ推進協会では「首都圏では東京・千葉・埼玉・神奈川のそれぞれ一部地域の490万世帯、近畿圏では大阪・京都・奈良・兵庫のそれぞれ一部地域の420万世帯で視聴可能」としているが、首都圏だけでも世帯数は1723万世帯であり(国土交通省 平成17年度 「首都圏整備に関する年次報告」より)、とても十分にカバーできているとはいえない。
ただ、9月には東京タワーの出力(800ワット)を、3倍の2.4キロワットにアップするための申請が許可され、現在はその試験が行われている。試験を終了し、いつから常時2.4キロワットでの送信が開始されるかは未定だが、開始されれば、首都圏のみではあるが視聴エリアは大幅に拡大される。
※初出時、申請の時期および一部内容につきまして誤りございましたので、該当箇所を訂正させて頂きました。関係各社の皆様には深くお詫び申し上げます。
「おそらく、西は立川や国分寺、北はさいたま市までぐらいが視聴エリアになるはず。何らかのかたちで、視聴可能エリアのアナウンスは行っていきたい」(松村氏)。
もちろん、首都圏/近畿圏以外でのサービス開始も視野に入っている。「次は名古屋と福岡で開始したいと思っているが、検討が必要だ。2011年には本放送が開始されるはずなので、それまではデジタルラジオ推進協会の一員として、大都市圏での実用化試験放送を推進していきたい」(エフエム東京 代表取締役会長 後藤亘氏)
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