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デジタル・ポータブル・オーディオの世界も重いほど高音質か?!プロフェッサー JOEの「Gadget・ガジェット・がじぇっと!」(4/4 ページ)

» 2006年11月27日 12時08分 公開
[竹村譲,ITmedia]
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 プラターズの歌う「ザ・グレートプリテンダー」は筆者の好きなオールディーズ曲のひとつだが、音楽がスタートした時点で、聞こえるスネアドラムをなでるワイヤブラシの音はiPodと比較して、ウォークマンの方が明らかに鮮明だ。ヘッドフォンをE5Cに変えるとパワー感は増すが、少し繊細さに欠けるイメージに変わったようだった。

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 ジェスロタルの「マイ・サンデーフィーリング」も同じく古い曲だが、ウォークマンは優等生的な再生音だ。少し面白みに欠けるが、ヘッドフォンをE5Cに変えることによってドラムの縁を叩くリムショットの鮮烈さが圧倒的になり、ライブ感が増す感じだ。

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 定番でよく聴くヘビーメタルの代表格であるアイアンメイデンの「ディファレント・ワールド」では、ヘビーメタルの要であるバスドラとバスタムに、明らかに1インチ上のサイズであるかのようなパワー感がある。ヘッドフォンをE5Cに交換すると、より強烈な音圧感が得られるが、多少ノイジーな感じも増す。クリアな感じのソニー製「内蔵ノイズキャンセリングヘッドフォン」の方が好みのユーザーがきっと多いだろう。筆者はステージの近くで聴くのが好きなのでE5Cで全く問題なかった。

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 サラ・ブライトマンの歌う限りなくクラシックに近い「アベマリア」は、たいていのポータブルオーディオの不得手なジャンルだが、新生ウォークマンはクリアで且つ品位のある再生音を実現している。特に飛行機内や地下鉄でこの曲を聴くにはノイズキャンセリング・ヘッドフォンは必須だろう。

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 ノイズのことを気にせず、再生音だけにこだわるなら、聴くまでは向いてなさそうな気がしたE5Cがなかなかの雰囲気を出してくれた。E5Cのようなカナル型のヘッドフォンは、如何に自分の耳にピッタリと押し込むかが重要だ。装着の仕方だけで、ノイズキャンセリング・ヘッドフォンに近い遮音効果は期待できるのだ。

 アップルのiPod 3機種とウォークマンNW-S703F、そしてヘッドフォン2種類を交互に繋ぎ直し、ご紹介した以外にも約10枚のジャンルの異なるCDを丸1日聞き比べたが、今回発売された新生ウォークマンは従来の「音質」に比較的無頓着なデジタル・ミュージック・プレイヤー達やその提供メーカーを、日本の伝統である「オーディオの土俵」に呼び込む大きな要因となるだろう。

photo 2006年11月末時点で、筆者のベストバイの組み合わせは、新ウォークマンとE5Cだ

  標準搭載された「ノイズキャンセリング・ヘッドフォン」の効果も大きいが、音楽を音の集合として捉えて好みを言うなら、ウォークマン+シュアE5Cが筆者の理想だ。しかし、飛行機の機内や地下鉄に乗っている時にはその効果を認めざるを得ない。

 デジタル・ポータブル・オーディオが登場して既に数年、今までは肝心のオーディオ機器としての優劣よりも、音楽配信の仕組みやその収益モデル、ファッショナブルな側面が常にフォーカスポイントとなった数年だった。しかし、そろそろ「音のクオリティ」も話題に上がる時期がやって来そうで嬉しい予感がする。

 E5Cの登場で証明された様に、たかがヘッドフォン1つだが、そのクオリティで、人の耳で聴くことの出来る音の粒度は大きく向上、変化する。デジタル・ポータブル・オーディオの世界もそれは同じだろう。アップルには音質重視のiPod新モデルの発売を、ケンウッドには商品流通の整備とカバレージが望まれる。

竹村譲氏は、日本アイ・ビー・エム在籍中は、DOS/V生みの親として知られるほか、超大型汎用コンピュータからThinkPadに至る商品企画や販売戦略を担当。今は亡き「秋葉原・カレーの東洋」のホットスポット化など数々の珍企画でも話題を呼んだ。自らモバイルワーキングを実践する“ロードウォーリア”であり、「ゼロ・ハリ」のペンネームで、数多くの著作がある。2004年、日本IBMを早期退職し、国立大学の芸術系学部の教授となる。2005年3月、より幅広い活動を目指し、教授職を辞任。現在、国立 富山大学芸術文化学部 非常勤講師。専門は「ブランド・マネジメント」や「デザイン・コミュニケーション」。また同時に、IT企業の広報、マーケティング顧問などを務める。

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