数年前まで、オーディオ機器は重いほど高音質であるという常識論を疑うことも無く、自宅にJBLの大型スタジオモニターを持ち込み、アンプを購入する時には、まずカタログの重量値に目が行く歪んだオーディオライフを過ごしてきた。
ただ、学生の時からずっと続けているバンド活動がきっかけでオーディオにのめり込んだためか、一般的な高級オーディオ・フリークからは目の敵にされる通称「ドンシャリ」とか「ズンドコ」と呼ばれる「ストリート風ラジカセ的ブーミー・サウンド」も意外と嫌いでは無い。
3年程前の引っ越しを機会に、狭くなったリビングへ新しく設置した薄型プラズマテレビの影響で、蒸気機関車のような超重量級オーディオもスマートで北欧的なBang&Olufsenのファッショナブルな一体型オーディオに変身した。デスクトップ・オーディオもBOSEのスタイリッシュなWave Music System。そして初代の昭和アナログ・ウォークマンから慣れ親しんだモバイル・オーディオはご多分にもれず、何の疑問を持つことなく、アップルの販促活動に乗せられ、初代から第5世代までの全iPodを揃えるまでになった。
そんな風に何時も何も考えていなかった筆者だったが、Shureの「カナル」(耳栓)型インイヤーヘッドフォン「E5C」を見栄で購入したことから大きな変化が起こりだした。
E5Cは、単体で数万円を超える超高価なヘッドフォンだ。「価格性能比」という使い古された用語を忘れ、キチンと使えば、そこそこのデジタル・ポータブル・プレイヤーからでも凄いパフォーマンスを引き出してくれる画期的なヘッドフォンだ。何度か新しいiPodを購入したが、E5Cさえあれば、いつも標準付属のヘッドフォンはまったく使わないので、飽きたiPodをオークションに出す時も「新品純正ヘッドフォン付き」と書ける為、落札漏れは皆無だった。
オーディオに関して多くの専門家やマニアの方々のお話を聞くと、基本的にオーディオ機器は、「本体重量が重ければ重いほど、基本的にその機器が出す音はクオリティが高い」と言う。もちろん、精密なオーディオ機器とはいえ、いい加減な人間が作るモノだ。常に例外はあるが、筆者も概ねその意見には賛成だ。実際、その感覚は昨今のコンパクト・オーディオ・プレイヤーの世界でもそれほど外れてはいない。
筆者は、発売日に第5世代の30Gバイトの第5世代iPod(以降、単に「iPod」と表記 実測133グラム)を購入、その後、そのiPodの大きさと重さに嫌気がさして、新しいiPod nano 8Gバイト(以降 「iPod nano」と表記 実測40グラム)を購入した。
そしてつい先頃、衝動的に手に入れた新しいiPod Shuffle(以降、「iPod Shuffle」と表記 実測16グラム)をあわせ、3台を同時に所有することとなった。まず、同じヘッドフォンで聴く限り、ミュージックソースによる多少の例外はあるが、明らかに重量の大きいiPodが圧倒的に高音質で、iPod nano、そしてiPod shuffleと続く。
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