すっかり通勤通学時の定番アイテムとして定着したポータブルプレーヤー。毎日持ち歩く愛用品となると、アクセサリーで自分だけのカスタマイズをしたくなるのが人情(?)だ。iPodならば最もバリエーションが多く、選ぶ楽しみがあるのはケースだが、今年はプレーヤーを問わず利用でき、音の変化がすぐさま体感できるヘッドフォンが人気だったようだ。
そんなヘッドフォンの中でも、異彩を放つカテゴリがある。今年下半期に各社から相次いで登場した「ノイズキャンセリングヘッドフォン」だ。
ポータブルプレーヤーは日常的に電車を中心とする交通機関のなかで利用されるが、そこには多種多彩なノイズ(地下鉄の走行音などはその最たるものだろう)が存在する。そのノイズを解消するため音量をアップする人もいるが、周りには大きな迷惑だし、耳にかかる負担も大きい。
大音量で周囲のノイズを打ち負かすのではなく、周囲の音がなるべく聞こえないようにしてやれば、外出先でも快適なリスニング環境を手にすることができる。遮音性の高いヘッドフォンを利用すれば目的を達することができるが、遮音性の高さは耳への密着を意味するので、高いクランプ圧で疲れを感じることもある。
そこで、ほとんどの製品が密閉感を高めたヘッドフォンに、外部の音をマイクで集め、その音に対して逆位相の音を生成、ぶつけてやることでノイズを電気的に低減する「アクティブノイズキャンセリング」方式を組み合わせることで、積極的なノイズカットを狙っているのだ。
外見はしては似通った製品も多いが、ノイズキャンセル回路の設定や集音マイクの感度によってかなり効き目は異なる。それに、ノイズキャンセリングヘッドフォンといえども、「オーディオ機器」であることは大切なポイントだ。いくら強力に外部の音をシャットアウトできても、オーディオ機器としてのクオリティに満足できなければ、常用するには至らないはずだ。
ノイズキャンセリングヘッドフォンの研究に最も早く着手したのは米ボーズだと記憶しているが、コンシューマ用製品の投入はソニーが先行した。1995年に登場した「MDR-NC10」を覚えている人も多いだろう。その後、ボーズからは「QuietComfort」、Sennheiserからは「PXC 250」、パナソニックからは「RP-HC100」などが発売されてきた。
今年下半期にはボーズとソニーはもちろん、東北パイオニアや日本ビクターといった国内メーカーが相次いで新製品を発売したほか、これまでヘッドフォンを製造していなかったJBLからも登場している。
タイプとしてはハウジングが耳全体を覆うオーバーイヤータイプが多いが、耳に乗せるオンイヤータイプやカナルタイプの製品もあり、選択の幅は広い。また、実売価格で5000円台という手ごろな製品もあり、購入時のハードルが低くなっているのも今年の傾向と言えるだろう。
今年下半期に登場した製品のレビューを通じて、ノイズキャンセリングヘッドフォンの魅力に迫ってみよう。
「JBL Reference 510」の第一の特徴はそのコンパクトさ。40ミリのドライバを搭載するがノイズキャンセリングの回路はハウジングに内蔵されておらず、別筐体となる構造が採用されている。そのため、ハウジングは非常にコンパクトだ。
耳の上にのせるオンイヤータイプだが、遮音性はかなり高い。ヘッドフォンそのもののも非常に素直な特性を持っており、JBLらしい、バランスに優れた音離れのよいサウンドが楽しめる。
ノイズキャンセルの効き目はかなり強め。無音時の動作音も大きめだが、外部の音がおおきくなればなるほど効果を発揮するセッティングがなされているようで、地下鉄車内などでは強力な効き目を体験できるはずだ。電源OFF時でも通常のヘッドフォンとして利用できる。
「SE-MJ7NS」は密閉型のオーバーイヤータイプ。ノイズキャンセルの回路と電池ボックスをハウジングに内蔵している。電源ボックスには単四形乾電池を2本収納し、重さは200グラム(本体のみ)。SRS Headphoneによるサラウンド機能を搭載しており、ノイズキャンセリングとサラウンドを同時に利用できる。
イヤーパッドはもちろん、ヘッドバンドにもレザーパッドが装着されているため、ソフトな装着感。オーバーイヤータイプということもあり、遮音性も高い。ノイズキャンセリングの効果は高く、電車内のアナウンスを聞き逃しかねないほどだが、風切り音などは拾いやすいようで、音量を絞ると逆に外のノイズがよく聞こえてしまう。
低音再生が得意な特性を持っており、迫力はあるが、反面で、高域のヌケや広がり感、爽快感といったニュアンスはあまり持ち合わせない。ポップスやロック、テクノなどとの相性は良く、特に打ち込みのベース音とは相性がいいようだ。
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