ITmedia NEWS >
連載
» 2007年04月03日 08時43分 公開

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:ハイビジョンビデオカメラ、今年の傾向 (4/5)

[渡邊宏,ITmedia]

――次は松下電器産業の「HDC-SD1」です。現時点では唯一、SDメモリーカードでHD録画を実現しているモデルです。

麻倉氏: これはもう執念というしかないですね。録画のHD化の流れが見えている中、技術力のある松下としては既存の技術で何らかの対応ができたはずですが、HDV陣営には加わらずにAVCHDをソニーと共同開発し、SDメモリーカードをメディアとして使うことを命題にし、開発されたモデルです。

photo 松下電器産業の“執念”、SDメモリーカードタイプのHDビデオカメラ「HDC-SD1」(撮影協力:ビックカメラ有楽町店)

 発表は2006年年末(2006年11月)ですが、実は当初、2007年の春に発表されるスケジュールだったと聞きますので、かなり開発を前倒しして発売されたことになります。HD録画機という製品ジャンルでソニーとキヤノンが先行したとき、それがかなりの焦燥感をあおったようです。

 メディアにフラッシュメモリを利用するタイプには優れた環境性能やメカノイズ低減というメリットがあり、彼らとしては「これからのビデオカメラはメカレス」という信念があります、その結実と言えるでしょう。

 ですが、私としては「非常に精密なメカを搭載するからこそ、ビデオカメラは諸外国のメーカーが追従できない製品として国内メーカーが存在感を発揮できるのでは」という思いもあります。

 HDC-SD1は画質面でも同じAVCHDを利用するDVDタイプ(HDC-DX1)に比べて贅沢な設計となっており、画質面でもかなり努力した跡がうかがえますが、AVCHDのクセともいえる部分はまだ残っています。

 同社のビデオカメラは伝統的に赤にこだわるというか、肌色の記録を強く意識する傾向がありますが、ソニーのAVCDH採用製品に比べて赤のプレゼンスが強く、その部分もHDビデオカメラとしては気になります。

 先ほど述べたようにAVCHD/ハイプロファイルは高解像度記録に適するという特性を持っていますが、HDC-SD1はまだその恩恵にはあずかれていないので、フルHDと思われる後継機にはその特性をいかして欲しいですね。それに精細感に乏しく、ダイナミックレンジも狭い傾向も感じられるので、そこも改善されるといいですね。

――次は新ブランド「iVIS」(アイビス)でHDビデオカメラ市場へ参入したキヤノンです。現在はDVテープを利用する「iVIS HV10」と「iVIS HV20」を用意しています。

photo キヤノンの「iVIS HV20」。メディアはMiniDVテープを利用する。麻倉氏曰く「トータルなキヤノンとしての姿勢が伝わってくるモデル」(撮影協力:ビックカメラ有楽町店)

麻倉氏: キヤノンは以前からさまざまなイメージング製品で称賛されているメーカーで、ビデオカメラについても20年以上前から研究を続け、1981年には「CVCビデオシステム」というフォーマットも開発しています。8ミリ時代にはニコンや富士写真フイルム(現富士フイルム)、ミノルタ(現 コニカミノルタ)といったカメラメーカーもビデオカメラに参入していましたが、残ったのはキヤノンだけになってしまいました。

 キヤノンだけが生き残った秘訣は、人間工学にもとづいた操作性の追求と徹底した画質へのこだわりに挙げられます、iVIS HV10についてもHDビデオカメラとしてこれだけコンパクトなフォルムにまとめてきたことは驚きに値しますし、画質もMPEG-2のよさを最大限に引き出した素晴らしいものです。コントラストもしっかり出ていますし、映像のパワー感もあります。

 キヤノンのビデオカメラはしゃきっとした、切り口の鮮明さが特徴です。1997年に登場した「DM-MV1」の色の濃さには驚いたものです。iVIS HV10も傾向としては変わらず、情報量指向のモデルと言えるでしょう。

 iVIS HV20も同様で、絵のパワーやシャッキリ感はそのままにバランスを向上させ、レンズを大幅にパワーアップさせています。HV10に比べるとボディはやや大振りですが、AF/手ブレ補正/ズームとすべてにおいてバランスに優れます。デザインについてはHV10に比べるとやや一般的な気もしますが、安定した撮影が可能です。トータルなキヤノンとしての姿勢が伝わってくるモデルといえますね。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.