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ハイビジョンビデオカメラ、今年の傾向麻倉怜士のデジタル閻魔帳(5/5 ページ)

» 2007年04月03日 08時43分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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――最後に日本ビクターの「GZ-HD7」です。今年発表されたばかりの最新機種で、業界初のフルHD録画を可能としたことでも話題になりました

麻倉氏: 日本ビクターはHD記録という点では先行しましたが、その後のラインアップ展開で出遅れてしまったため、最後発としてフルHD化を急ぐ必要があったのですね。

 GZ-HD7については、HDDを搭載することでHVDよりも高いビットレートで映像をMPEG-2でリッチに保存できる製品です。HDDのメリットは長時間/高画質記録に集約されつつあることを示してもいますね。

photo 業界初のフルHD録画機、日本ビクターの「GZ-HD7」。ウエットな表現が非常にうまく、映像の質感や味わいを上手にとらえるとは麻倉氏(撮影協力:ビックカメラ有楽町店)

 AVCHDを採用する製品は容量の小さいメディアに高画質録画を行うという発想が根本にありますが、GZ-HD7はHDDを搭載することで容量という制限から開放されています。本格的な絵が撮れるという意味ではトップクラスに位置するでしょう。

 フルHD録画ができると言うだけでもすごいことですが、コントラストやすがすがしい白の伸び、黒の締まりなどもしっかり表現されています。MPEG-2を採用することでディテール感もよいですね。

 GZ-HD7で録画したフルHDの映像を、自宅の50インチプラズマモニター(パイオニアのPDP-5000EX)でチェックしてみました。風景や人物といった一般的な映像についてはフルHDだからというよさを圧倒的には感じることはできませんでしたが、光の表現には大きな違いがあります。ダイナミックレンジが非常に広く、ウエットな感じをうまく表現します。情報量で勝負すると言うより、映像の質感や味わいを上手にとらえているように感じます。それが現時点でのフルHDのメリットでしょう。

――コメント頂いたように各社からHDビデオカメラが出そろいましたが、なにを基準に製品選びをしていけばいいでしょうか

麻倉氏: 現時点での話に限れば、画質を重視するならMPEG-2系を選ぶべきですし、操作性やビデオカメラ自身の編集機能を重視するなら、AVHCD記録のHDD/SDメモリーカードタイプを選べばいいと思います。

 大きな流れとしては、ビデオカメラがHD化していくのは間違いありません。秋口以前には各社がフルHD対応モデルを投入してくるでしょう。画質面ではHDVがまだ優位性を保っていますが、それまでにはAVCHDも改善を進めてくるはずです。確かに「待ち」を決め込めばよりよい新製品が登場しますが、大きなイベント――それこそ赤ちゃんの誕生などは待ってくれません。ビデオカメラの場合は使いたいと思ったときに、その時、一番良いと思う製品を買うことが製品選びの絶対の秘訣ですね。映像との出会いは一期一会ですよ。


麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴

 1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのProject K2/S9500など、世界最高の銘機を愛用している。音楽理論も専門分野。
 現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。

著作


「松下電器のBlu-rayDisc大戦略」(日経BP社、2006年)──Blu-ray陣営のなかで本家ソニーを上回る製品開発力を見せた松下の製品開発ヒストリーに焦点を当てる
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント


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