フルハイビジョン(以下フルHD)に対応したフロントプロジェクター(以下プロジェクター)市場が盛り上がりを見せている。
コンシューマー向けプロジェクターでフルHD対応の市場は、これまでLCOS陣営の天下であったが、今年はDLPや透過型液晶の陣営も相次いでフルHD製品を投入。LCOS勢も魅力的な新製品をリリースし、プロジェクター市場は、一気にフルHD化が加速した。
今回のデジタル閻魔帳は、すでに年末商戦のフルHDプロジェクター新製品は徹底チェック済みというオーディオビジュアル・デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏に、最新フルHDプロジェクターのお薦めポイントを語ってもらった。
――ボーナス商戦に突入しました。「いよいよ、憧れのフルHDホームシアター環境を……」と考えているユーザーも多いと思います。
麻倉氏: 今年の年末のオーディオビジュアル業界の見どころは、家庭用フルHDプロジェクターの競演です。
2年前まで、家庭用フルHDプロジェクターといえば、ソニーの「QUALIA 004」、ビクターの「DLA-HD2K」、富士通ゼネラル「LPF-D711」ぐらいで、いずれも200万円以上するハイエンド向けでした。
それが昨年、ソニーの「VPL-VW100」やビクターの「DLA-HD11K/11KL/12K/12KL」のような100万円台の製品が登場して、それまでの約半額でフルHDを楽しめるようになりました。「では、今年はさらに半額で100万円を切るのか」と期待されていたのですが、まさにその通りになったわけです。
世の中の流れというのは、うまくできているもので、BD-ROMを始めとするBlu-ray Discの登場が今年に遅れたことや、地上デジタル放送の全国展開が秋に進んだということが、結果として低価格なフルHDプロジェクターの登場と不思議にリンクしていたのですね。
放送では地上デジタル以外に、例えばBSデジタルのフルHD放送はそれまでWOWOWとNHKしかなかったのが、BS日テレがフルHD宣言をして積極的にフルHDコンテンツを展開。当然、今後は他局も追随していくでしょう。BD-ROMやHD DVDのパッケージソフトも、ここにきて続々と登場しています。エアチェックからの動き、もう1つはパッケージメディアの動きから“フルHD”のニーズが急激に高まってきているのです。
フルHDの環境がすごく整ってきたところに、技術というのはタイミングよくシーズとして登場するということをあらためて感じました。
――フルHDプロジェクターでの今年の傾向を教えてください。
麻倉氏: 今年の最大の見どころは、従来のフルHDデバイス以外でのデバイスの登場でしょう。これまでフルHDの分野ではソニーSXRDやビクターD-ILAといったLCOS陣営が主導してきました。これはLCOSが、他のデバイスに比べて高精細化の動きに優位だったからです。もちろん、コントラストや色再現性など基本性能としてLCOSが優秀だったこともあります。
そのようなLCOS主導のカタチから今年は一変、DLP陣営が台頭してきました。先鞭を切ったのはマランツで0.95インチのフルHD DLPチップを採用した「VP-11S1」を今年4月に発表。今年秋にはシャープが同じデバイスを使って「XV-Z21000」を市場に投入しました。ベンキューが年末商戦に用意した「W10000」も、高いコストパフォーマンスで注目されています。
一方、透過型液晶陣営もいよいよ普及機をリリース。エプソンのD6パネルを使う三菱電機「LVP-HC5000」/セイコーエプソン「EMP-TW1000」/松下「TH-AE1000」など、フルHDながら実売50万円を切る製品で、市場を驚かせました。
今年は、従来の3つのデバイスがすべてフルHDに対応したというところが大きなトピックスですね。
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