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フルHDプロジェクターのススメ麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/4 ページ)

» 2006年12月08日 13時11分 公開
[西坂真人,ITmedia]

――LOCS系のフルHDプロジェクターでは、昨年VPL-VW100というヒットを飛ばしたソニーが投入した「VPL-VW50」にも注目が集まっていますが。

麻倉氏: ソニー「VPL-VW50」は、ビクターDLA-HD1の対抗品というより“SXRDフルHD機の正統なる継承者”と見るべきでしょうね。従来の「VPL-VW100」とは違う魅力があります。ソニーのSXRD機は、新製品ごとに元気さがついてきた感じがありますね。

photo ソニーの「VPL-VW50」

麻倉氏: キセノンランプを使わないことによる色の再現性でもなかなか頑張っており、むしろ色の力強さという意味で大いに魅力が出てきたと思います。黄色の繊細なテクスチャーという表現ではQUALIA 004に負けますが、VW50はあくまでも元気さ、鮮烈さが売りの製品ですね。

 一方、VW100やVW50はアクティブアイリスを使って1万5000:1を実現していますが、コントラスト値だけで見るとQUALIA 004は2000:1でしたが、それを弱点と感じさせない緻密で濃密な映像がありました。特に中間階調の良さではQUALIA 004にかなうものはまだありませんね。

 VW50が狙うのは、ソニーが5〜6年前に販売した透過型液晶のヒットモデル「VPL-VW10/11/12」の代替需要です。液晶プロジェクターでバランスのいい映像をつくり、一世を風靡したラインアップですが、今回のVW50は従来製品と投射距離や設置金具も共通で、従来の設置場所にそのまま収まるのです。

 非常に静かでコンパクト、デザイン性もありますし、私としても大推薦の製品です。

ハイエンドから普及機まで――「DLP」

――今年話題となっているのは、0.95インチのフルHD DLPチップを採用したDLPのフルHD機ですよね。

麻倉氏: 同じDLPチップを使った製品でも、マランツとシャープでは、画作りがだいぶ違いますね。

 マランツの「VP-11S1」は一言でいうと「素直」。輪郭を強調したり、特定の色を鮮やかにするといったことはせず、あるがままに信号からくる映像を出すという生成調のスタンスです。ハイエンドオーディオ的な作り方なんですね。アメリカのインストーラーの意向を取り入れると、こういう画作りになります。素直でバランスの佳いものですから、この静謐なトーンが好きな向きにはお勧めですね。

photo マランツの「VP-11S1」

麻倉氏: 一方のシャープですが、この会社は1989年にXV-Z100という液晶プロジェクターで一世を風靡したホームプロジェクターの雄でした。その後、少し間を置いて2001年に今度はDLPを採用した「XV-Z9000」で再参入し、それから翌年に「XV-Z10000」翌々年に「XV-Z11000」と1年おきに新製品を投入していたのですが、その後3年はまたお休みしており、そして今回フルHDの「XV-Z21000」を投入してきました。ある時期に製品を集中して、その後数年は開発期間を置く。シャープはそれを繰り返す面白い会社ですね。

photo シャープの「XV-Z21000」

麻倉氏: 「XV-Z21000」の特徴は、従来までのDLPの悪さであった暗部階調ノイズが非常に少ないところですね。従来機に比べてノイズの粒がひじょうに小さくなっています。

黒のつやっぽさ、ぬれた感じはシャープの表現のうまさがあります。シャープのDLPは赤が鮮やか過ぎだったり黒が沈み過ぎなど以前から表現力過多なところがありましたが、今回の製品はバランスが凄くよくなりました

 テクスチャー自体は積極的に画作りをしていこうという姿勢が見られます。ここがマランツと違うところで、マランツは「自分で表現を加えない」ものですがシャープは「感動のための表現はこう有るべきだ」という熱い提案を示してくれるのですね。

 カラーホイールが5倍速なので、人によっては字幕の部分などカラーブレーキングを感じる時があるかもしれませんが、それを勘案しても、映像の魅力き大きいですね。

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