ITmedia NEWS >

絞れ!光! 光の量で写真に表情をつける脱フルオートの道 第3回

» 2007年07月18日 12時37分 公開
[小山安博,ITmedia]

 前回はシャッタースピードについて解説した。今回は、シャッタースピードと対になって覚えて欲しい「絞り」について説明する。少し分かりづらいかもしれないが、写真を楽しく撮影するためにはぜひとも覚えて欲しい。

光の量を調整する「絞り」

 復習になるが、カメラは、レンズから入った光を、銀塩カメラであればフィルムに、デジタルカメラならCCDなどの撮像素子に光を当てることでその一瞬を切り取るものだ。シャッタースピードは、フィルムや撮像素子に光を当てる「時間」を調整するものだった。それに対して絞りは、フィルムや撮像素子に光を当てる「量」を調整するための機構だ。

 機構的には薄い板を組み合わせて中心に(なるべく)丸い形の穴を作り、その穴の大きさを調整して光の量を加減するための装置を指し、レンズ内部に装着される。この薄い板を「絞り羽根」といい、メーカーによって絞り羽根の枚数は奇数枚、偶数枚のいずれかになるが、たとえば絞り羽根が7枚だと、穴の形は七角形になる。

photo コンパクトデジカメでもレンズの周辺部にF値が記載されていることが多い。写真のLUMIX DMC-FX01のF値は2.8から5.6

 絞りはレンズの正面から入った光の量を、穴の大きさを変えることで調節する。当然、穴が大きくなるほど光の通る量は多くなり、フィルムや撮像素子に当たる光の量も多くなる。このため、穴を大きくするほど写真はより明るくなる。

 このとき、絞りの穴の大きさを示す数値として「絞り値(F値)」という言葉が使われ、「F2.0」「F10」などと表記される。絞り値では、光の量が多くなるほど数値は小さくなるため、F8.0よりもF2.0の方が明るく、F8.0よりもF10の方が暗くなる。

 最も絞りの穴を大きくしたときの絞り値を、そのレンズの「開放F値」と表現し、一般的にレンズ性能の評価基準である「レンズの明るさ」を示すF値は、この開放F値を示す。なお、穴を大きくすることを「絞りを開ける」、穴を小さくすることは「絞りを絞る」と表現する。

絞るか開けるか、ボカすかボカさないか

 絞りは光の入る量を調整する機能なので、屋内や夜の撮影など、光の量が多くない場面では、なるべく絞りを開くことで光を多く取り込み明るい写真が撮れる。逆に晴天の昼間など、十分に光がある場面では絞りを絞ることで、適切な明るさの写真を撮ることができる。

 だからといって、暗い場面では絞り開放で、明るい場面では絞りを絞って、と単純に言えないのが写真の面白さ。シャッタースピードを速くしたり遅くしたりように、絞りを利用することで写真のボケをコントロールし、表現を大きく変えることができるからだ。

 人物写真を見ると、人の顔にはピントが合っているけれども、背景はもやーっとしてピントが合っていない、というものをよく見るだろう。この背景のもやーとしたものがボケだ。どこにもピントが合っていなくて写真全体がぼやーっとしてしまった「ピンボケ」は単なる失敗だが、意図的に背景をぼかして、主題となる人や物を浮かび上がらせるための手段としてもボケは利用できる。

 カメラのピントはある一点に対して合わせるものだが、その周辺にも「ピントが合っているように見える」範囲がある。それ以外はピントが合っていないためにボケるのだが、この「ピントが合っているように見える」範囲を、絞りで調節することができるのだ。

 絞りは、開けば開くほどピントが合っているように見える範囲が狭くなり、絞れば絞るほどピントが合っているように見える範囲は広くなる。

photo 絞りF4.0(このレンズでの開放F値)。前後の範囲にピントが合っていない(=ボケている)のが分かるだろう
photo ,こちらは絞りF9.0。建物全体にピントが合っている

 そのため、たとえば暗いレストランでお皿の上の料理を撮影しようとして、暗いので明るく撮ろうと絞りを開いて撮影すると、料理の一部だけにピントが合い、それ以外の料理がぼけてしまう、なんてことが起こる。かといって、料理全体にピントが合うように絞ると、光の量が少なくなってしまって写真が真っ暗になってしまう、なんてこともにもなる。

 では、どうするのか。そこで登場するのが「露出」という概念。次回は、シャッタースピードと絞りを組み合わせることで光の量をコントロールするこの露出について説明してみよう。

どうやって設定するの?

 シャッタースピードと同様に、絞りを自分でコントロールできるコンパクトデジカメは少ないが、ハイエンドコンパクトデジカメであれば絞りを自分で決めることができる。モードダイヤルに「A」(絞り優先オート)というモードがあれば、これに設定する。Aモードがないカメラであっても、まれに絞りを変更できる機種もあるが、これ自体はあまり多くない。

 ちなみに、コンパクトデジカメの中には、本来絞り羽根を使う絞りに対して、レンズ内部でフィルターを使って光の量を調節するタイプのものもある。この場合、設定できる絞り値が少ない、絞っても開放にしてもボケに変化がない、といった特徴がある。

 また、絞りでボケをコントロールできる、と書いたが、ボケに関しては絞り以外の要素も絡んでくる。これに関しては別の回で解説する。

関連キーワード

デジカメ | デジタルカメラ


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.