日本ビクターとケンウッドは7月24日、2008年の経営統合に向けて資本・業務提携すると発表した。ビクターが実施する総額350億円の第三者割当増資を、ケンウッドとその筆頭株主のスパークスグループが引き受ける。
第三者割当増資は8月10日付けで実施。ケンウッドが200億円を、スパークスが運用するファンドが150億円を引き受ける。
ビクター親会社である松下電器産業の持ち株比率は52.4%から36.8%に低下し、連結子会社から持ち分法関連会社となる。ケンウッドの持ち株比率は17.0%、スパークスグループは12.8%となる。
業務提携は、両社合わせて1600億円規模・世界シェアナンバーワンとなるカーエレクトロニクス事業と、ホーム/ポータブルオーディオ事業で10月1日をめどに始める。ジョイントベンチャーによる新製品開発を検討するほか、資材調達・生産の効率化を行う。
資本提携後に経営統合委員会を設置。持ち株会社を設立してその傘下に両社を配置する手法など、経営統合の方法を検討する。
「強力なパートナーを得て心強い」――ビクターの佐藤国彦社長は同日、ケンウッド、松下、スパークスグループと共同で開いた会見でこう述べた。ビクターは2期連続で営業赤字、3期連続で最終赤字に陥っており、経営立て直しに苦戦してきている(関連記事参照)。
経営をV字回復させた松下にとって、事業分野がかぶっている上、経営不振が続くビクターは最後の課題。米投資ファンドへの売却やMBO(経営陣による自社買収)といった選択肢を模索してきたが難航し、ケンウッドとの統合に落ち着いた。
松下の大坪文雄社長は「自主独立の精神が強いビクターは、松下グループから外れて再建するのが最善と判断した」と話す。「わたしも松下でAV事業を担当し、松下とビクターのシナジーを検討したが、体質的に相容れないと実感していた。事業分野が重複し、ダブルブランドになっていた」(大坪社長)
ケンウッドから松下に「ビクターとの連携を強化したい」と打診があったのは昨年秋。「ケンウッドは5年前に、ビクターと同じような危機的状況にありながら急回復した企業。製造業同士で連携していくのが最適と判断した」(大坪社長)
ケンウッドの河原春郎会長は「専業メーカーが世界市場で急速にプレゼンスを失っているのに危機感を覚えている」と語る。「グローバルで競争が激しく、デジタル時代は開発コストも膨らむ。当社で売り上げの6割を占めるカーエレクトロニクス分野でも収益率が低下している。専業メーカー同士の再編を含めた業界再編は課題だ」
「事業会社同士が寄れば、新しい付加価値が創造できる。自力成長の限界を超えるため、コストカットだけではなくシナジーを追求したい。当社は水平分業型、ビクターは垂直統合型でうまく補完できる。協業で日本の専業メーカーの生き残りを目指したい」(河原会長)
ケンウッドは経営再建の先輩でもある。「5年前に危機を乗り越えて構造改革を断行した経験からアドバイスもできる。ビクターにはいい状況の分野もあり、たまたま一部が不振なだけ。一刻も早く元気を取り戻してほしい」(河原会長)
ビクターは再建計画で、2007年度に営業黒字化し、2008年度に成長への基盤を固め、2009年度から成長する――というシナリオを描いている。「まずはカーエレクトロニクスとオーディオ分野の業務提携で経営を立て直し、その後経営統合してAV市場で勝ち残っていきたい」(佐藤社長)
統合は「最も早くて来年の株主総会終了後」(佐藤社長)。統合後に松下が全株を手放す可能性について大坪社長は「まずは統合を見届けたい。その後の株式の売却は、選択肢としてはあり得る」とした。スパークスグループの阿部修平社長は「速やかな経営統合のために財務支援した」とし、統合後に株式を売却するかどうかは明言しなかった。
ビクターは同日、経営再建の指針「アクションプラン2007」を発表した。5月30日に公表した再建計画よりさらに踏み込んだ内容で、事業の整理再編を加速させる。
国内・欧州では液晶テレビの不採算モデルの生産・販売を中止。リアプロジェクションテレビは「次世代機を含めて基本戦略を見直す」としている(関連記事参照)。記録メディアや部品事業も「事業譲渡を含めて再度見直す」としている。
HDDに記録する「Everio」が好調に推移しているカムコーダーは、08年モデルの前倒し投入などでさらに販売を拡大。グローバルシェア20%を目指す。カーエレクトロニクス事業も強化する。
人員削減は約1000人から1150人規模に拡大。生産拠点の統廃合も加速する。
液晶やリアプロ事業の見直しを織り込み、2008年3月期の業績予想も同日、下方修正した。「前回予想公表時から2カ月経っていないのに下方修正は申し訳ないが、再建を確実にするためだ」(佐藤社長)。売上高は前回公表時よりも200億円減の7400億円、営業利益は同69億円減の81億円、経常利益は同64億円減の6億円、最終赤字は67億円悪化して172億円に上る見通し。
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