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» 2007年07月31日 09時51分 公開

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:次世代DVDの凄さ (1/3)

対応機器と作品も増えつつあるBDとHD DVDだが、最近になってようやく24pやHDオーディオといった「次世代のポテンシャル」を体感できる機会が増えてきた。“ハイビジョン・ラバー”麻倉怜士氏に、改めて次世代DVDの凄さを聞いた。

[渡邊宏,ITmedia]

 Blu-ray Discが先陣を切り、HD DVDが追走する形で始まった次世代DVDのテイクオフ。BD/HD DVDともに低価格な再生環境が用意されたほか、ライトワンスメディア(BD-R/HD DVD-R)への書き込みも可能なレコーダーも登場し、双方ともにある程度の陣容が整った格好だ。

photo 多忙な中でも最新の次世代DVDパッケージのチェックを欠かさない麻倉氏

 ややもすると録画に関する機能ばかりに目が行きがちであるが、最近ではパッケージソフトのバリエーションも充実してきている。このところDVDのリリースと同時にBD/HD DVDの次世代DVD版を用意するタイトルも増えており、次世代DVDのすごさを体感しやすくなっている。

 DVDというフォーマットがデビューした際もそうだったが、新しいフォーマットが登場してすぐに、その能力を最大限に引き出すようなコンテンツ作りは難しい。コンテンツ制作側も新フォーマットに慣れる必要があるからだ。しかし、ここに来て新フォーマットの能力、スゴさを引き出したコンテンツも増えてきた。

 デジタルメディア評論家 麻倉怜士氏のイチ連載『麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」』。今回は“ハイビジョン・ラバー”でもある麻倉氏に「次世代DVDの凄さ」を語ってもらった。

――ソニーが「BDZ-S77」(2003年4月発売 Blu-ray Discレコーダー)で次世代DVDの口火を切って4年以上が経過します。パッケージソフト(ROM)への対応は後回しになりましたが、最近ではパッケージもDVDと同時にBDあるいはHD DVD版が用意されることも増えました。

麻倉氏: 最近感心したのはフルHDのプラットフォームをいかすコンテンツが増えてきたことですね。これまでは映画興行のために作られ、その後にパッケージ化される作品が大多数だった訳ですが、最近は「イバラード時間」のようにBDパッケージに収めることを前提とした作品までも登場するようになりました。

photo 「イバラード時間」(C)2007 INOUE Naohisa・Studio Ghibli

 この「イバラード時間」の映像は非常に美しく、モネの印象画をベースにしたような気持ちのよい時間を過ごさせてくれます。なにより、BDのため作られたことが大きなトピックに挙げられるでしょう。次世代DVDであることを手段、メッセージとしたことは注目すべきことです。

 イバラード時間のオーサリングはソニーが行っていますが、コーデックにはMPEG-4 AVCのハイプロファイルが用いられています。いままでMPEG-4 AVC/ハイプロファイルを用いたオーサリングはパナソニックしか行っていなかったので、ここにも注目ですね。

 それに、このディスクには1枚の中にMPEG-2とMPEG-4 AVCという2つの映像コーデックが用いられています。本編がMPEG-2、コメンタリーがMPEG-4 AVCなのですが、見比べてみると興味深い違いがあります。MPEG-2の映像はバランスがとれた手慣れた感じなのですが、MPEG-4 AVCの映像はコントラストが明確で、シャキッした映像です。オリジナルの信号は同じなので圧縮方式の違いが映像に反映されていることは面白いいですね。大容量というフォーマットの特徴をいかす取り組み、切り口が出てきたことは歓迎すべきことですね。

 次世代DVDの音楽作品では、ソニー・ミュージックエンタテインメントの「アンジェラ・アキ MY KEYS 2006 in 武道館」 も傑作です。ソニーのBD作品は冒険心に富んだところがあって(販売元はエピックレコード)、平井堅のライブ映像(「平井堅/Ken Hirai 10th Anniversary Tour Final at Saitama Super Arena」)は映画用カメラで、ハンク・ジョーンズのライブ映像(ザ・グレイト・ジャズ・トリオ/ハンク・ジョーンズ レジェンド・オブ・ジャズ〜 ライヴ・アット・ブルーノート東京」)はハイビジョンハンディカム「HDR-HC1」で撮影されています。

 「MY KEYS〜」が素晴らしいのは、とてもシネマらしさを醸し出しているところです。確かにハイビジョン映像ですが、いわゆるハイビジョン的なコントラスト感や階調感とは異なるシネマガンマによる不思議な“映画っぽさ”が作り出されています。20台以上の映画用カメラで撮影されており、映像美で見せる音楽作品といったおもむきです。

 ピアノでの弾き語りライブなのですが、臨場感、空気感の共有ができる作品です。実際のライブも「共有感」が漂うものだったと思わせるほどの映像美で、カメラワークや音的にも素晴らしい仕上がりです。残念ながらサラウンドではなく2chステレオ収録なのですが、次世代DVDの能力、魅力を引き出すことができた好例と言えるでしょう。

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