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» 2007年07月31日 09時51分 公開

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:次世代DVDの凄さ (2/3)

[渡邊宏,ITmedia]

――最近では「24p」(毎秒60フレームのプログレッシブスキャン、映画フィルムはこの方式で映し出されている)という言葉もよく耳にするようになりました。

麻倉氏: パイオニアが対応するBDプレーヤー「BDP-LX70」をリリースし、プレイステーション 3も最近のアップデートで対応するようになったことで耳にする機会が増えましたが、映画も収録は24Pで行われていますので、技術としてはそう新しいものではありません。実はDVDも収録自体は24pで行われているのですよ。

photo 24p対応のパイオニア製BDプレーヤー「BDP-LX70」

 VHSとレーザーディスクの再生機は60i(毎秒60フレームのインターレーススキャン、アナログテレビ放送もこの方式)対応なので、オリジナル信号が24pであっても、パッケージとしては2-3プルダウン(A-B-Cとコマが並んでいるところを、AA-BBB-CCのように映す処理)して収録していました。DVDは24p収録ですが、最初はDVDプレーヤーも2-3プルダウンし、しかもインターレースになった60iしか出力できなったのですが、あとで60p対応のプレーヤーが出現しました。東芝と松下電器が嚆矢でしたね。初めて60pの映像を見たときには、とても映画的だと感じたのを覚えています。

 なぜDVDは24pで収録されているのに60pでの出力しかできなかったのか。それは単純にD端子というインタフェースの制約があったからに過ぎません。次世代DVDはHDMIを伝送路に使えますから、閉じこめられていた24pの映像を解き放つことができます。これからは24p出力が当たり前になるでしょう。

 24pの映像ですが、劇場での映画フィルムの見え方そのものになります。。その効用が一番はっきり分かるのはテロップで、60pだと字幕がブレながら動いていくのに対して、24pはスムーズに進みます。プルダウンすることで、余計な1フレームが入り本来はブレないはずのところがブレてしまっているのです。

 プルダウンすることでディスプレイにおけるノイズリダクションの処理がスムーズさを欠くといった問題も発生する可能性があります。「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」の序盤でカップが映るシーンは等速でパンするのですが、そのシーンでは24pの安定感が顕著に感じられます。これから大画面で映像を見る分には24pは必須条件になるでしょう。

 実は映像を映し出すディスプレイ側での対応は既に進んでおり、パイオニアのプラズマは2005年モデルから対応している(24pを3倍速で表示)ほか、液晶は東芝がREGZA H3300で対応しています(24p×5のシークエンス)。プロジェクターで言えば三菱のLVP-HC5000、日本ビクターのDLA-HD1、ソニーのVPL-VW50などが対応しています(24p×2の48フレーム対応)。この24p×2の48フレームとは映画館の上映環境と同じ写し方です。

photo 24p対応した液晶テレビ、東芝「REGZA 52H3300」

 液晶テレビの対応製品はまだ少数ですが、秋から登場し始め、来年には出そろうはずです。「オリジナル映像に近づこう」という流れからフルHDの映像が出現した流れと同じく、24p対応もフィルムの持つオリジナルの質感――特に滑らかさ、動きを再現しようという動きの一環と言えます。

 24pの映像世界では動きの部分にジャダー(映像のブレ、揺れ)が出るのは避けられないのですが、このジャダーが「安定して」映し出されることが、映画館で見るのと同じ映像を作り出すのです。この「精密なブレ」が映画の持つ動きの緻密さ、シークエンスを再現するために欠かせないのですね。

 最近、デジタル処理でブレを追放する機能が開発されていますが、ブレのない映像、いわゆるジャダーレスでは撮影者の感覚とはズレが生じてしまいます。それはグレイン(粒状)ノイズの話も同じです。映画的な味わいを忠実に再現するのが24pであって、ジャダーレスやグレインノイズの低減はテレビ的な映像、見やすさ重視の映像といえるでしょう。

 ディスプレイ表現の話をすると、単に信号な表示をするだけでは感動には至りません。DVDの時代は表現力ではまだストーリーテリングの領域で「伝える」までにとどまっていましたが、次世代DVDはもっと多くの要素を映像に込められます。

 次世代DVDの登場は、そのパフォーマンス・能力をどのように活かすかという挑戦をハードからソフトに突きつけています。その中で、「映画的な感動」をもたらす24pは素晴らしい要素だと言えますね。これからは、二次元的な存在感や能力を高めるだけではなく、時間方向の表現力向上も求められるのだと思います。

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