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華やかな時代を迎えるハイビジョンビデオカメラ麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/3 ページ)

» 2007年09月05日 08時30分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

麻倉氏: パナソニックはVHS、VHS-Cとメディアを選択してきましたが、その後に国内市場では8ミリをキャンセルし、DVテープで大きな地位を占めるまでになりました。DVテープを利用するSD画質のビデオカメラは同社とソニー、ビクター、キヤノンが製品をラインアップしました。これらのメーカーのうち3社はハイビジョンメディアとして、まずはDVテープにハイビジョンを録るHDVフォーマットに賛同しましたが、パナソニックはそのグルーブには加わらず、SDメモリーカードを選択しました。

photo SDメモリーカードを利用するパナソニックの最新製品「HDC-SD5」(レビュー)

 SDメモリーカードは同社が全社を挙げて推進するメディアなので、それは戦略的な選択といえるでしょう。ビデオカメラ開発側が選択したのではなく、全社戦略の一環として選ばれたと聞いています。メディア選択は企業の特徴までも表す話と言えるでしょう。

 戦略として対極に挙げられるのがソニーです。パナソニックがSDメモリーカードにこだわり続けるのに対して、同社はどん欲なまでにすべての需要に応じられるように各種メディアを採用してきました。

 HDVを利用する製品を作りながらもAVCHDを開発し、DVDタイプ、HDDタイプと投入し、最近ではメモリースティックのみを利用するタイプの製品までも投入しました。強者の選択ともいえる全方位戦略を採用してきたわけで、これは同社の強さを象徴しているといえるでしょう。まだBlu-ray Discを採用した製品はありませんが、投入する可能性は高いですね。

photo メモリースティックを利用する「HDR-CX7」(左)、HDDを利用する「HDR-SR8」(右)

 ただ、全方位戦略を継続するとすれば、部門部門の力が際だち、それぞれの専門性を失わずにいることが求められます。そうしなければ、「何でもあるけど、何もない」といった状況になりかねません。

 「Everio」で存在感を高めた日本ビクターですが、戦略としてはHDDに特化したパナソニック型といえ、現時点ではその戦略は“アタリ”といえます。ではなぜHDDタイプが受け入れられるのかですが、時間に対する安心感がその根底にあるように思います。

 同社は以前メディアにDVDを採用しており、720pのハイビジョンDVDビデオカメラを投入しましたが30Pだったので動画がブレ、あまり評判は芳しいものではありませんでした。次にSDながらもHDDビデオカメラのEverioを投入して評価を得たので、そこにハイビジョンという要素をインプリメントして現在の成功をつかんだのです。

 Everioも初代はリムーバブルHDD(マイクロドライブ)を採用していましたが、ヒットしたのは固定式の大容量HDDを搭載してからです。そこから分かるのは、長時間撮影へのニーズが非常に高いと言うことであり、それに答えられるのが大容量HDDの搭載だったということです。ビデオカメラ業界に対するひとつの答えともいえ、各社もEverioの成功以来、HDDタイプを投入しています。

photo マイクロドライブを搭載した初代Everio「GZ-MC100」(左)「GZ-MC200」(右)

 キヤノンですが、同社は画質コンシャスを崩さないものつくりをする会社ですね。HDVカムのiVIS H20の画質に対する評価は非常に高いのですが、リニアメディアであることが問題でした。そこにHD録画可能なDVD(iVIS HR10)とHDD(iVIS HG10)タイプを投入してきました。次にどのような製品を投入してくるかは分かりませんが、「利用フォーマットの中でNo.1の画」を目指す方向にブレは生じないでしょう。

photo キヤノンの「iVIS HR10」(左)と「iVIS HG10」(右)

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