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おひとり様が楽しい“スピーカー”、ソニー「PFR-V1」レビュー(1/2 ページ)

» 2007年10月30日 09時04分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]
photo 軽量さが外見からもうかがえるデザイン。ブラックで統一されており、高級感も高い

 頭に装着するけどヘッドフォンではない。かといってスピーカーと呼ぶにはずいぶんイメージからかけ離れたカタチをしている。そんな、とてもユニークな製品「PFR-V1」がソニーからリリースされた。

 PFR-V1を初めて見たとき、「ナニコレ」と思った人は少なくないと思う。実は僕もそんなひとり。これって一体どういうシチュエーションで使うの? というのが初見での感想だ。しかしその内容を読み解くうちに、かなり興味深い製品であることに気がつく。

 「パーソナルフィールドスピーカー」という呼び名が表すとおり、このPFR-V1は、耳の超至近距離に小型スピーカーをおくことで“おひとり様”オーディオ空間を実現させる。普通のスピーカーともヘッドフォンとも違う、非常に珍しい存在なのだ。

 その成り立ちがあまりにも斬新で、個人的にも大変興味が惹かれたため、実機を1週間ほど借用してみた。いろいろと試していくうちに、この製品のメリットやユニークな使い方などがさらに色々と見えてきた。

独特の定位感と装着感

 外観を見てもらえば分かるとおり、PFR-V1は頭に装着して使用する。そういった点ではヘッドフォンに近いイメージだが、実際のところはかなり違う。なかでも定位感に関してはまったくといっていいほど異なっている。

 一般的なヘッドフォンは、スピーカーを頭の両側から挟み込むという構造上、ステレオイメージが崩れ凝縮されてしまううえ、頭内、脳の中心あたりに定位が発生してしまう。感じ方によっては「頭の中で人が歌っている」となってしまうため、これを嫌ってヘッドフォンを使わないという人も少なくない。しかしPFR-V1の場合は耳の前方にユニットを配置しているために、一般的なスピーカーと同じような、きちんと左右に広がるステレオイメージが具現化されている。

photo スピーカーは21ミリ径のリングツイーターユニット。磁気回路に最大エネルギー積440kJ/m3のネオジウムマグネットとパーメンジュールを採用するなど、高級素材を多用して音質向上を図っている
photo 耳まわりの接触面は、耳穴のパスレフポートと耳たぶ上側に位置するバーの2カ所。圧力がうまく分散されているため圧迫感は皆無。長時間もストレスなく使用できたが、贅沢をいえばバスレフポートを非接触にしてもらえるとうれしい

 ヘッドフォンの場合はある程度の遮音性が重要だが、PFR-V1は耳の至近距離に小型スピーカーを付けているという形式なので、遮音に関してはまったく考慮されていない。近くにいるとどんな音楽を聴いているかはバレバレとなってしまう。

 このように、PFR-V1は外観のイメージとは異なり、ヘッドフォンとは一線を画す製品。あくまでも「超小型ユニットを頭に装着する」スタイルを採用するスピーカーなのだ。

 ここまでの説明でPFR-V1がどのようなコンセプトの製品なのかは、分かってもらえただろう。では次に、どういったユーザーをターゲットとした製品なのだろうかを推測しよう。そうすることで、この製品の具体的な使い方が見えてくる。ポイントとなるのはデザインと価格だ。

 PFR-V1のスピーカーユニットは、アルミダイキャスト製の球形キャビネットに納められた中高音ユニットと、そこから伸びた細いアルミ製のパスレフポートによって構成されている。それらは艶やかなブラックに塗装が施されており、質感はなかなか。その上に伸びていくジェラルミン製のヘッドバンドと相まって、スタイリッシュかつ高級感溢れるイメージが醸し出されている。

 装着はバスレフポートを耳穴に当てるようにして、球形キャビネットが耳の斜め前方へくるように行う。装着した姿はちょっとユニークだが、不格好というイメージはない。どちらかというと、格好よすぎて僕のような野暮ったい人間はかえって気恥ずかしくなる、といった印象だろうか。

 装着感に関しても悪くはない。総重量が約96グラムと超軽量なことに加え、耳まわりの固定部分が耳穴のバスレフポートと耳たぶより1センチくらい上方に配置されているバーに分散されているため、押しつけ感がなく、長時間の装着にも不満は感じなかった。このように、デザイン、装着感ともにかなりの高級志向が伺えるのは確かだ。

photophoto スピーカーユニットから伸びているアルミ製のバスレフポートにはウレタン系の塗料が塗られているため、耳に触れても不快感はない

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