着実に進みつつある映像のHD化を受け、新しいメモリカード規格が今年4月に誕生した。その名は「SxS」(エスバイエス)、サンディスクとソニーが共同で策定した新規格だ。基本的に業務用ビデオカメラ向けでまだ店頭ではお目にかかれないが、“次世代メモリカード競争に一番乗り”したと言っていいスペックは要注目の存在といえる。
SxSカードはExpress Card規格に準拠しており、最大2.5Gbps(理論値)の転送速度を誇るPCI Express x1インタフェースを経由しデータを高速転送できる。従来のPCカードスロット規格で最速のCardBusでも転送速度が1.056Gbpsだったことと比較すると、インタフェースの速度は2倍以上に高速化されている。後述する製品の実効速度は800Mbpsであり、現在入手可能なPCカード型のメモリカードより確実に速い。
形状にも注目したい。SxSでは2種類あるExpressCardの形状のうち幅34ミリの「ExpressCard/34」を採用、PCカード型フラッシュメモリと比較して大幅な小型化を実現している。重量も60%程度と軽く、その意味でも期待できそうな新規格といえる。
そして今月下旬、ソニーからSxSメモリカード「SxS PRO」が発売される。容量の異なる2タイプが用意され、市場推定価格は16Gバイトの「SBP-16」が11万円前後、8Gバイトの「SBP-8」が6万円前後。同時発売されるSxSメモリカード対応ビデオカメラ「XDCAM EX」は、業務用だけあって希望小売価格84万円と高額だ。
気になる記録時間だが、35Mbps/VBRのHQモード使用時でSBP-8が約25分、SBP-16が約50分。25Mbps/CBRのSPモード使用時でSBP-8が約35分、SBP-16が約70分。十分な長さとはいえないものの、大容量タイプの追加が行われれば状況は改善されると考えられる。
静止画/動画の高精細化に伴いデータ量は急上昇、キャプチャ時間の短縮を求めるユーザーの声が高まっている。低速なメモリカードに記録されたHD映像をUSB 2.0経由でPCへ取り込む、という状況に誰しも納得しているわけはなく、SxSのようなExpressCardベースのメモリカードへの潜在需要は相当高いはずだ。ノートPCでのExpressCardスロット搭載機が増えつつある現在、量産体勢が整い低価格化が進めば、状況も変わってくることだろう。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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