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» 2007年11月12日 08時30分 公開

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:CEATECで見つけた3つの次世代トレンド (4/5)

[渡邊宏,ITmedia]

――HD DVDは今後、どうすべきでしょうか。

麻倉氏: では、東芝になったつもりで考えてみましょう。私がリーダーなら、まず第一に、家庭用AV機器で次代を拓くというスピリットを持ちます。

 HD DVD陣営はここにきて家庭用AV機器ではなくPCに活路を見いだそうとしているようです。藤井さんはキーノートでそのことを強調していました。確かにHD DVDのソフトをPCでという見せ方もあると思いますが、プレーヤーで再生する方が圧倒的に便利ですし、PCの小さな画面でみても、面白くないです。PCをプレーヤーにするという使い方はとても不便です。ネットとの連係もPCからではなく、プレーヤーやレコーダーで追求すべきでしょう。

 私ならPCと次世代ディスクの付き合い方は単なる再生機ではなく、カメラの編集などクリエイティブの部分にいきます。ソニーのBDレコーダーより、ソニーのハイビジョンカメラとの親和性のよいレコーダーをつくるとかですね。

 あと、HDDと光ディスクの位置づけを正しくします。これほど差が付いてしまった根本的な原因として、レコーダー製品に対する基本的な姿勢が挙げられます。東芝は「HD DVD搭載HDDレコーダー」としています。つまり主役はHDDであり、HD DVDは付属物という扱いですね。

 私ならそんなことは絶対に言いません。HDDはあくまでも映像を一時蓄積するサーバーであり、「HDDからハイビジョンメディアへ、コレクションアイテムとして書き出していく」というのが、残しておきたいコンテンツが満載のハイビジョン放送の記録にふさわしいソリューションなのではないでしょうか。

 ハイビジョンはタイムシフトメディアではありません。コレクション・メディアなのです。まずもって根本思想から正します。「HD DVD搭載HDDレコーダー」ではまったく意気が上がらないです。「HDD付きHD DVDレコーダー」が正しいのです。

 BD陣営はその点がよく分かっています。どの会社も決して「BDつきHDDレコーダー」などとは口が裂けても言いません。正しく「HDD付きのBDレコーダー」です。東芝は光メディアをもっと大切にして、ハイビジョン映像をHD DVDメディアに保存するという行為をもっと誠実にとらえるべきでしょう。

――東芝は「HD Rec」によるDVDへのハイビジョン記録をデモし、10月31日に発表した新製品「RD-A301」でそれを採用しましたね(→AVC録画対応で10万円を切る? 新VARDIAが登場)。

麻倉氏: やっと真面目に取り組む姿勢が出てきました。実売価格も10万円を切るとのことですから、大いに歓迎しましょう。ただしDVDへの記録に頼り過ぎているのが大問題です。

photo HD RecによるDVDへのハイビジョン録画が行える「RD-A301」

 SDからHD画像まで画質を問わずDVD1枚に入れられるのはメリットですが、それは次世代メディアのHD DVDで行うのが筋でしょう。「旧コンテンツを新メディアに」というのが正しく、「新コンテンツを旧メディアに」では、記録時間や画質の面など、さまざまに無理があります。

 ハイビジョン放送は、次世代メディアでオリジナルのMPEG-2 TSで高画質かつ長時間録画するというのが基本にならなくてはなりません。なぜならば、画質こそがハイビジョンの最優先事項ですから。せっかくウルトラな高画質で送られているコンテンツを、画質を落としてまでDVDに記録するのでは本末転倒です。私は嫌いです。HD RecだけでなくBD陣営の採用するAVCRecもダメです。HD DVDでもBDでもDVDへのハイビジョン記録はあくまでも過渡期の産物です。「新しい酒は新しい革袋に」という格言がこの場合は絶対に正しい。

 画質でエクスキューズの入る余地のない、大容量の次世代メディアをもっと大事にして欲しいと思います。DVDなどに記録することより、次世代メディアを普及させることが先でしょう。BDメディアも昨年の約半額とここにきて安価になってきましたし、有機色素記録膜のBD-Rが登場すれば、飛躍的に低価格化が進むでしょう。安くなる可能性のあるHD DVDメディアにも大いに期待しています。

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