我が家に初めてアスペクト比4対3の電動昇降式100インチ・スクリーンを取り付けたのは今から15年前。プロジェクターはもちろんCRT(ブラウン管)を使った重くて巨大な3管式。それをダイニングテーブル真上の天井に吊って使用していたのだった(そんなわけで、その頃は女房にテーブルの上での鍋物と焼き肉禁止令を出していた)。
取り付けもオオゴトだったが、視聴するのもタイヘンだ。映画を観るときは、まず約20分間通電し、CRTが安定してきたところでおもむろにクロスハッチ信号を出してRGBのレジストレーション調整、青や赤の微妙なズレを直したところでやっとお目当てのディスクをLDプレーヤーのトレイに載せる。映画を観る前にフツーに30分はかかるのである。深夜仕事から帰って、レジ調整したところで力尽きてソファで爆睡という夜がいったい何回あっただろうか。
しかし、そんなさまざまな儀式性に彩られたプロジェクター視聴だったからこその楽しさがあった気がする。しかもNTSCのインターレース映像を100インチに拡大してスダレごしに観る映画。数百万円かけてそんな画質に熱狂していたのである。だからラインダブラーでスダレを失くしたレーザーディスクの映像を初めて見たときは、ほんとにハゲシク驚き、感動したよなぁ。
それが今や30万円そこそこでフルHD解像度のプロジェクターが、そして1080p出力が可能なBD-ROMやHD DVDが5000円以下で買えるのである。しかも、あのタイヘンな設置調整や夜毎のレジ合わせをする必要もなく、ポンと手軽に超高画質大画面が実現できるのだ。
しかし、業界が期待するほどホームシアター用プロジェクターもハイビジョンソフトも市場は拡大していないと聞く。なぜだ、なぜみんなこの超高画質大画面に反応しないんだ? みんなもっと本気で驚いてくれ。3管式で楽しく苦労したぼくたちは、ほんとに不思議な気分です。
昨年来、3LCDやLCOS等の固定画素表示デバイスを用いたフルHD解像度(1920×1080ピクセル)のホームシアター用プロジェクターが各社から数多く登場している。今年の新製品も一通りチェックしてみたが、2世代、3世代めということもあり、さすがにどれも高い完成度である。繰り返すが、これが30万円そこそこで買えるのかと思うと、ほんとうに信じられない思いがする。
なかでも、今年の新製品の中ではダントツに高価なモデルということになるが、ソニー「VPL-VW200」の最終量産試作モデルの画質の素晴らしさには本気で驚いた。
本機は、昼光に近いブロードな発光スペクトラムを持つキセノンランプを光源に使ったSXRDと呼ばれる反射型液晶(LCOS)プロジェクター。やはりバツグンに発色がよい。とくにキセノンの素に近い5500kに設定された「色温度・低」のシネマ・ポジションで観る映画ソフトは、本当に目の御馳走だ。
本機で様々なプログラムソースをチェックしてみたが、とくに感激したのは、HD DVD「キング・コング」の主演女優ナオミ・ワッツの美しい肌色表現であった。
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